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転生編
初めての自己紹介。初めての冷蔵庫
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「ようやく名前教えてくれたね」
「…え? ……あ…!」
アーシェスにそう言われて、石脇佑香はようやく自分が名乗ってすらいなかったことに気が付いた。さすがにこれは失礼だと思った。
「ごめんなさい…!」
視線を泳がせて顔すら見ることができずにそう言うしかできなかった。そんな彼女にアーシェスは言った。
「大丈夫。徐々に慣れていけばいいから。時間はたっぷりあるよ。だって私達、この<書庫>の中では死なないもの」
『…え? あ、そうか…』
そう言われてピンときた。
『死んでここに来たのなら、もう死ぬことはないんだ……だって<データ>なんだし……
だから二千年も引きこもったり出来るんだ…!』
何だか合点がいってしまって、急に気が楽になるのも感じた。
『そっか、これは一種のリアルなゲームのようなものだと思えばいいのかも……』
一人納得している石脇佑香を、アーシェスとメジェレナは見守っていた。と言うか、かつての自分の姿を思い出していたと言うべきか。彼女達もここに来たばかりの頃はこんなものだったのだ。
「じゃあイシワキユウカ、お近付きのしるしにこれあげる。最近買い替えたところで引き取り手を探してるところだったんだ。型は古いけどまだまだ十分に現役だよ」
そう言ってメジェレナはドアの脇に置いてあった小型の冷蔵庫を差し出した。見るからに一人暮らし初心者が買い求めそうな、カラーボックス程度の大きさの冷蔵庫だ。
「え、でも…?」
出会ったばかりでこんなものを貰うとか、石脇佑香にはピンとこなかった。そんなものを気前よくくれる人がいるなんてことが理解できなかったのだ。
明らかに戸惑ってるのが分かる彼女に、アーシェスが言った。
「大丈夫。これがここの暗黙のルールだから。ここに来たばかりで生活の基盤がない人には、自分ができる最大限のもてなしをするって。遠慮しなくて貰ったらいいよ。その分、次に新しい人が来たら、あなたができることをしてあげたらいいから」
そこまで言われたら、
『受け取らない方が失礼…てことなのかな……?』
とも思えた。
もっとも、実際には要らないなら断っても何の支障もなかったのだが、今の彼女にはまだそこまでの理解がなかったのである。
「ありがとうございます!」
何度も頭を下げて、小型とは言えさすがに中学生の女の子には少々重い冷蔵庫を何とか部屋に運び込んだ。こうして、まずは冷蔵庫が手に入った。使い込まれてる感じはあるが中はきちんと掃除されていて綺麗だった。
『私の、冷蔵庫…?』
まだ電源も繋いでないからただの箱でしかないそれを、石脇佑香はしげしげと眺めてしまっていたのだった。
「…え? ……あ…!」
アーシェスにそう言われて、石脇佑香はようやく自分が名乗ってすらいなかったことに気が付いた。さすがにこれは失礼だと思った。
「ごめんなさい…!」
視線を泳がせて顔すら見ることができずにそう言うしかできなかった。そんな彼女にアーシェスは言った。
「大丈夫。徐々に慣れていけばいいから。時間はたっぷりあるよ。だって私達、この<書庫>の中では死なないもの」
『…え? あ、そうか…』
そう言われてピンときた。
『死んでここに来たのなら、もう死ぬことはないんだ……だって<データ>なんだし……
だから二千年も引きこもったり出来るんだ…!』
何だか合点がいってしまって、急に気が楽になるのも感じた。
『そっか、これは一種のリアルなゲームのようなものだと思えばいいのかも……』
一人納得している石脇佑香を、アーシェスとメジェレナは見守っていた。と言うか、かつての自分の姿を思い出していたと言うべきか。彼女達もここに来たばかりの頃はこんなものだったのだ。
「じゃあイシワキユウカ、お近付きのしるしにこれあげる。最近買い替えたところで引き取り手を探してるところだったんだ。型は古いけどまだまだ十分に現役だよ」
そう言ってメジェレナはドアの脇に置いてあった小型の冷蔵庫を差し出した。見るからに一人暮らし初心者が買い求めそうな、カラーボックス程度の大きさの冷蔵庫だ。
「え、でも…?」
出会ったばかりでこんなものを貰うとか、石脇佑香にはピンとこなかった。そんなものを気前よくくれる人がいるなんてことが理解できなかったのだ。
明らかに戸惑ってるのが分かる彼女に、アーシェスが言った。
「大丈夫。これがここの暗黙のルールだから。ここに来たばかりで生活の基盤がない人には、自分ができる最大限のもてなしをするって。遠慮しなくて貰ったらいいよ。その分、次に新しい人が来たら、あなたができることをしてあげたらいいから」
そこまで言われたら、
『受け取らない方が失礼…てことなのかな……?』
とも思えた。
もっとも、実際には要らないなら断っても何の支障もなかったのだが、今の彼女にはまだそこまでの理解がなかったのである。
「ありがとうございます!」
何度も頭を下げて、小型とは言えさすがに中学生の女の子には少々重い冷蔵庫を何とか部屋に運び込んだ。こうして、まずは冷蔵庫が手に入った。使い込まれてる感じはあるが中はきちんと掃除されていて綺麗だった。
『私の、冷蔵庫…?』
まだ電源も繋いでないからただの箱でしかないそれを、石脇佑香はしげしげと眺めてしまっていたのだった。
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