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歴史上最も忌むべき悪女
転換
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『ミカ様に対する国民の感情が変わってきている……』
ミカの右腕として彼女を支えていたネイサンは、帝国内の空気の変化を感じ取っていた。
それまではミカに対する賞賛の声が聞くともなく聞こえていたにも拘らず、近頃は、
「ミカ様は変わってしまわれた」
「恐ろしい」
「まるで魔女だ」
といった悪評が漏れ伝わってくるようになったのである。
それに対してネイサンは、
「愚かな…! 今の帝国は、ミカ様の強い決断があればこそ成り立っているというのに……!」
と憤るが、当のミカ自身は、
「よい。捨て置け。目先のことしか見えぬ者に道理を説いても届くことはない」
そう冷たく言い放つだけだった。
しかし、一度噴き出した悪感情は、これまでのミカの<政策>によって不利益を被った者達を中心に共感を集め、加えて、<大きな声>にはついつい迎合してしまいがちな者達にも伝染し、流行病のように広がっていった。
特に、元マオレルトン領民だった者達の間でまことしやかに囁かれていた、
『ミカ王妃は、リオポルド王を追放するために、リオポルド王を強く支持するマオレルトン卿を謀殺するために、わざとデヴォイニト・フローリア王国に攻め込ませた』
という噂が広まると、それまでミカを支持していた者達の間にも、
「恐ろしい…まさに魔女の所業だ……!」
「自分を拾ってくれたリオポルド様に対して、なんと恩知らずな…!」
などという<意見>が広まり、次々と手の平を返し始めたのである。
しかも、そのような声が上がっているのを知りながらも、ミカは、帝国に対して反抗的な振る舞いをした者を容赦なくギロチン台へと送り込んでいく。
「ミカ様、このところの民の声を考えると、あまり厳しすぎるのは逆効果なのでは……?」
ネイサンの意見具申にも耳を貸さず、ほとんど事務的に罪人に対する斬首刑を言い渡していくのである。
さらには、
「国というものは、<敵>の姿が具体的であるほどに結束を強めるものだ……」
と、まるで独り言のように呟いたという。
そして冬を越え、硬く冷たかった空気が緩みだした頃、待ち望んでいた暖かな日差しがようやく帝国全土を照らし始めると、国民達はそれまでの鬱憤を晴らすかのように仕事に打ち込み始めた。
勤勉だった農民は競うように畑を耕し、それまでは必ずしも勤勉とは言い難かった者達も、
『働ける時に働かなくては』
とでも言わんばかりに仕事に精を出した。働きたくとも仕事がないという状況がよほど堪えたのだろうか。
だが同時に、ミカに対する反感も、勢いよく伸びる苗のように、強く膨れ上がっていったのだった。
ミカの右腕として彼女を支えていたネイサンは、帝国内の空気の変化を感じ取っていた。
それまではミカに対する賞賛の声が聞くともなく聞こえていたにも拘らず、近頃は、
「ミカ様は変わってしまわれた」
「恐ろしい」
「まるで魔女だ」
といった悪評が漏れ伝わってくるようになったのである。
それに対してネイサンは、
「愚かな…! 今の帝国は、ミカ様の強い決断があればこそ成り立っているというのに……!」
と憤るが、当のミカ自身は、
「よい。捨て置け。目先のことしか見えぬ者に道理を説いても届くことはない」
そう冷たく言い放つだけだった。
しかし、一度噴き出した悪感情は、これまでのミカの<政策>によって不利益を被った者達を中心に共感を集め、加えて、<大きな声>にはついつい迎合してしまいがちな者達にも伝染し、流行病のように広がっていった。
特に、元マオレルトン領民だった者達の間でまことしやかに囁かれていた、
『ミカ王妃は、リオポルド王を追放するために、リオポルド王を強く支持するマオレルトン卿を謀殺するために、わざとデヴォイニト・フローリア王国に攻め込ませた』
という噂が広まると、それまでミカを支持していた者達の間にも、
「恐ろしい…まさに魔女の所業だ……!」
「自分を拾ってくれたリオポルド様に対して、なんと恩知らずな…!」
などという<意見>が広まり、次々と手の平を返し始めたのである。
しかも、そのような声が上がっているのを知りながらも、ミカは、帝国に対して反抗的な振る舞いをした者を容赦なくギロチン台へと送り込んでいく。
「ミカ様、このところの民の声を考えると、あまり厳しすぎるのは逆効果なのでは……?」
ネイサンの意見具申にも耳を貸さず、ほとんど事務的に罪人に対する斬首刑を言い渡していくのである。
さらには、
「国というものは、<敵>の姿が具体的であるほどに結束を強めるものだ……」
と、まるで独り言のように呟いたという。
そして冬を越え、硬く冷たかった空気が緩みだした頃、待ち望んでいた暖かな日差しがようやく帝国全土を照らし始めると、国民達はそれまでの鬱憤を晴らすかのように仕事に打ち込み始めた。
勤勉だった農民は競うように畑を耕し、それまでは必ずしも勤勉とは言い難かった者達も、
『働ける時に働かなくては』
とでも言わんばかりに仕事に精を出した。働きたくとも仕事がないという状況がよほど堪えたのだろうか。
だが同時に、ミカに対する反感も、勢いよく伸びる苗のように、強く膨れ上がっていったのだった。
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