59 / 112
歴史上最も忌むべき悪女
見せしめ
しおりを挟む
ボリントン領での暴動は、一度火が点いてしまうと抑えようがないものだった。そもそも、領主であるボリントン卿が怠惰な性格だったこともあり、暴動に至る前に手を打つということをしなかったのだ。
また、ボリントン卿自身が自分達の分の食料はしっかりと溜め込んでいたというのもあって、それに対する反発も含まれていたのかもしれない。
いずれにせよ、領主であるボリントン卿の手には負えなくなっていたのは事実である。
そこでミカは、ボリントン領に元々備えられていた軍ではなく、自身直属の、元傭兵達を中心とした屈強なそれを派遣。暴動の鎮圧に乗り出した。
「構わん! 逆らう者は容赦するな! たとえ女子供であってもだ!!」
と命じて。
一方、今回の暴動を引き起こしたボリントン領の領民達が、ものの道理をわきまえない、理性の欠片も持ち合わせない愚者の群れだったのかと言えば、必ずしもそうではなかった。
確かに、自分では努力せず、そのくせ、困った時には他人が助けてくれるのが当然だと考えていたような暗愚の輩も少なからずいたようだが、それと同時に、爪に火を点すような慎ましい暮らしを心掛けていたにも拘らず状況が好転せず、親族の中に栄養失調が基で病に罹り命を落とした者が出たことで、やむにやまれず蜂起したという者もいた。
ボリントン領、ロマソン村のルドガーも、そういう者の一人だった。
ルドガーは、元はルベルソン領に住む農民で、妻の父親の農地を借り受けて畑を耕していたのだが、その勤勉さに惹かれた妻と結婚し、今では、親に捨てられ彼の畑で盗みを繰り返していたことをきっかけに養子となった五人を含む七人の子を持つ父親だった。
今回の異常気象の所為で彼の畑の作物もほぼ全滅してしまったものの、郷里にある彼が元々持っていた畑には戻らず、家族のためになんとかこの地で耐え忍ぶことを心に決めていた。
しかし、そんな彼を嘲笑うかのように状況は逼迫し、ルベルソン領の親族からの支援も途絶え、妻の母が栄養失調が原因の病で命を落とし、我が子の一人も同じ病で倒れたことで、生きるために、家族を生かすために、決起したのである。
だが、日々の畑仕事で体力には自信があった彼も、戦うための訓練に明け暮れた軍人の前には歯が立たず、百人の仲間と共に捕らえられた。ただし、その百人を捕らえるために数千人の暴徒が容赦なく殺されたようだが。
そして三日後には、今回の暴動の首謀者の一人として王都に連行され、即、見せしめのためにギロチンによる公開処刑が行われたのである。
もちろんその決定を下したのは、ミカだった。
ルドガーは最後まで抵抗し、警備の兵士に棍棒で滅多打ちにされ、ギロチンに掛けられた時にはすでに息がなかったようだが。
また、兵士に棍棒を執拗に打ち付けられ意識を失う寸前、彼は、
「ローナ…子供達を頼む……」
と、妻の名を呟いたのだという……
また、ボリントン卿自身が自分達の分の食料はしっかりと溜め込んでいたというのもあって、それに対する反発も含まれていたのかもしれない。
いずれにせよ、領主であるボリントン卿の手には負えなくなっていたのは事実である。
そこでミカは、ボリントン領に元々備えられていた軍ではなく、自身直属の、元傭兵達を中心とした屈強なそれを派遣。暴動の鎮圧に乗り出した。
「構わん! 逆らう者は容赦するな! たとえ女子供であってもだ!!」
と命じて。
一方、今回の暴動を引き起こしたボリントン領の領民達が、ものの道理をわきまえない、理性の欠片も持ち合わせない愚者の群れだったのかと言えば、必ずしもそうではなかった。
確かに、自分では努力せず、そのくせ、困った時には他人が助けてくれるのが当然だと考えていたような暗愚の輩も少なからずいたようだが、それと同時に、爪に火を点すような慎ましい暮らしを心掛けていたにも拘らず状況が好転せず、親族の中に栄養失調が基で病に罹り命を落とした者が出たことで、やむにやまれず蜂起したという者もいた。
ボリントン領、ロマソン村のルドガーも、そういう者の一人だった。
ルドガーは、元はルベルソン領に住む農民で、妻の父親の農地を借り受けて畑を耕していたのだが、その勤勉さに惹かれた妻と結婚し、今では、親に捨てられ彼の畑で盗みを繰り返していたことをきっかけに養子となった五人を含む七人の子を持つ父親だった。
今回の異常気象の所為で彼の畑の作物もほぼ全滅してしまったものの、郷里にある彼が元々持っていた畑には戻らず、家族のためになんとかこの地で耐え忍ぶことを心に決めていた。
しかし、そんな彼を嘲笑うかのように状況は逼迫し、ルベルソン領の親族からの支援も途絶え、妻の母が栄養失調が原因の病で命を落とし、我が子の一人も同じ病で倒れたことで、生きるために、家族を生かすために、決起したのである。
だが、日々の畑仕事で体力には自信があった彼も、戦うための訓練に明け暮れた軍人の前には歯が立たず、百人の仲間と共に捕らえられた。ただし、その百人を捕らえるために数千人の暴徒が容赦なく殺されたようだが。
そして三日後には、今回の暴動の首謀者の一人として王都に連行され、即、見せしめのためにギロチンによる公開処刑が行われたのである。
もちろんその決定を下したのは、ミカだった。
ルドガーは最後まで抵抗し、警備の兵士に棍棒で滅多打ちにされ、ギロチンに掛けられた時にはすでに息がなかったようだが。
また、兵士に棍棒を執拗に打ち付けられ意識を失う寸前、彼は、
「ローナ…子供達を頼む……」
と、妻の名を呟いたのだという……
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢とオッサン商人の不器用な純愛
鍋
恋愛
私、リリアベール・グリフィールは悪役令嬢らしい。異世界から来た青年に婚約破棄を予言されたけど、大好きなフェルナンド殿下との結婚を諦めきれなくて、隣に立つのに相応しい淑女になろうと、努力してきた。
しかし、婚約者であるフェルナンド殿下の態度は魔法学園入学後、冷たくなっていく。
そして、卒業のダンスパーティーで謂われもない罪を着せられ、婚約破棄を告げられた。
隣には光の乙女の姿が……。
泣くだけ泣いた、これからはちょっと年上の不器用な商人と共に平民として生きていきます。
未練たっぷりの元婚約者が追いかけてきます。
R18は保険です
設定はゆるゆる、ご都合主義
ありがちな婚約破棄物です。ほのぼのを目指します。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
悪役令嬢ってこれでよかったかしら?
砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。
場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。
全11部 完結しました。
サクッと読める悪役令嬢(役)。
拗らせ王子は悪役令嬢を溺愛する。
平山美久
恋愛
処女作になります。
文章ところどころおかしいところあると思いますが完結後にゆっくり直していこうと思ってます。
最後まで楽しんでもらえたら幸いです。
*大変申し訳ございませんが
サラのストーリーは
別のタイトルとして今後連載予定になりますので
拗らせ王子は一度完結になります。
【完結】悪しき魔女の悪役令嬢はBL世界の中で奮闘する!
かのん
恋愛
私シルビアンヌは、このBLゲームの世界の悪しき魔女、悪役令嬢として生まれことに腐女子として歓喜いたしました。
なので、ヒロインちゃん(♂)を自分の侍女として雇ったり、攻略対象者(♂)の女性へのトラウマをヒロインちゃんを使って阻んだりと画策いたします。
これは、BL世界だからと、皆が男が好きなのではと疑う主人公がおりなすドタバタ劇。
※BLゲームの物語ではありますが、あまりBLではありません。あくまでも主人公は女の子です。
また、ご都合主義の物語でありますから、ご了承いただける方は読んでいただけると嬉しいです。
完結済みですので、安心して読んでいただけたらと思います。毎日更新します。
悪役令嬢は義弟にザマアされる?
ほのじー
恋愛
【本編完結】【R18】ゲームの悪役令嬢に転生したフィーヌは、義弟であるレオナルドの幸せの為に悪役令嬢を貫く決意をした。彼に嫌がらせしたりするけど、毎度何故かレオナルドは嬉しそうだ。「あれ、なんか違う」と思うもフィーヌは悪役を演じ続けた・・・
【Hotランキング1位ありがとうございます!!】【恋愛ランキング/小説ランキング3位ありがとうございます!!】【お気に入り5100人達成!!ありがとうございます】
※始めはコメディテイスト、途中少し残虐描写が入りますがハピエン予定なのでご安心ください
※☆マークはR15もしくはR18程度の性描写ありです。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
悪役令嬢のスクラップ&ビルド! 〜隠しルートの【女王エンド】目指して逆ハーレムとチート魔術で愛と平和の国を作ります〜
虎戸リア
恋愛
「……ああ、また貴族共のせいで死亡フラグと破滅フラグが立ったぁ……ええいめんどくさい、そもそもの原因であるこの腐った国を一度ぶっ壊す!」
息をするだけで死亡フラグが立ち、歩くだけで破滅フラグが肩を組んでやってくる不遇系悪役令嬢、ルーチェ・クロイツ。
彼女が禁術書の呪いで前世の記憶を取りもどしたのは10歳の時。彼女の前世は日本人のアラサー女子だった。
そして自分が10人のヒロインから選べる自由さがウリのVR乙女ゲーに出てくる、破滅エンドしかないと言われている悪役令嬢、ルーチェ・クロイツその人である事に気付いた。
「絶望しかないけどそういえば一つだけハッピーエンドあったっけ、なんだいけるじゃん」
彼女は持ち前のポジティブさ、前世の知識、そしてチート魔術を武器に唯一のハッピーエンドである隠しルート【女王エンド】を目指す事を決意する。
こうして死亡フラグと破滅フラグを折り続ける為にハチャメチャに生きる彼女に惹かれて次々と魅力的な人物が彼女の下に集まってきた。
エルフショタ、剣の達人、大陸一の商人、他国の皇子……そしてドラゴン。
これは逆境をバネに、フラグも国も人もまとめてスクラップして、理想の国をビルドするルーチェの愛と平和の成り上がり恋愛譚である!
・毎日更新!
・恋愛要素あり
・逆ハーレム要素あり
・冒険、チート、無双要素あり
・内政あり
・第三者視点あり
小説家になろうにも投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる