上 下
2,585 / 2,588
第五世代

ルイーゼ編 たまたま良い方向に進めただけ

しおりを挟む
かつて地球に存在した<超大国>の一つでは、

『人材は畑から採れる』

と揶揄されるくらいに人的資源をひたすら浪費する形を取っていたらしい。まあその国では、

『人民は国家を支えるために存在する』

って考えが極まっていたそうだから、『国家のために人民は生きて死ぬのが当たり前』だったそうだ。しかもそんな無茶苦茶なことをしててもそれなりの期間に亘って国家として存続できてたそうだから、当時はそれだけ<人口>そのものが多かったということだろうな。実際、地球人口は最大百億超までいったそうだし。

しかし、人間にも<種を生かすための本能>は残っていたのか、<非婚>や<子供を持たないことを選択するカップル>が激増。小手先の<少子化対策>はまったく効果を発揮せずに恐ろしい勢いで人口は減少していったという。<人口爆縮>だ。

こうなると『人材は畑から採れる』なんて理屈はもうまったく意味を成さず、それこそ死刑囚すら動員してまで労働力の確保をしなきゃならなくなった。このことが結果として<死刑の全面廃止>に繋がったのは皮肉としか言いようがないのか。まあ代わりに<死刑相当の判決を受けた囚人の強制労働>が導入された形ではあるが。

それでも労働力不足は解消できず、AIやロボットの性能向上が急がれた。『必要は発明の母』と言われるが、当時の危機感は<必要>どころの騒ぎじゃなかっただろうなと俺も想像できるよ。それこそ、

『AIやロボットが人間以上の働きをできるようにならなきゃ人間は確実に滅ぶ』

レベルだったそうだしな。

幸い、AIやロボットの性能向上に必要な人材はまだ残っていたことでそれが実現できて、ロボットにロボットを作らせることで数を確保、一気に人材不足を補うために配備が進められたという話だ。

ただこの時にも、

『急いでロボットにロボットを作らせるために十分な制限を掛けていなかった』

のが原因で<ロボットの暴走>を思わせる出来事があったらしいが、これも詳細は伝わっていない。ぎりぎりのところで回避されたか抑えることができたか、現に大規模なロボットの暴走や反乱は起こっておらず今に至ってるわけで。

本当に綱渡りの状態だったらしいな。

だからこそそういう失敗を経験として活かし、同じ轍を踏まないように知恵を絞ることができるのも人間という生き物なんだろうさ。まあそれ自体が非常に危ういバランスの上で成り立ってたんだろうが。たまたま良い方向に進めただけというのもあると思う。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

精霊のジレンマ

さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。 そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。 自分の存在とは何なんだ? 主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。 小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...