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第五世代

ルイーゼ編 本当に親身になれる者なんて

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新暦〇〇四十三年八月十七日



まあなんにせよ、俺がどれだけあれこれ考えていようともルイーゼ自身はそんなことまったく気にもしていない。彼女はただただ自分がやりたいことをやってるだけだ。

AIが進歩すると共にメイトギアの性能も上がって完全に人間(地球人)ができることはほぼすべてできるようになってようやく、

<能力の格差による様々な不均衡>

や、

<人間(地球人)が掲げる平等という概念の矛盾がもたらす軋轢>

らが緩和されてきたという事実がある。これまでにも何度も語ってきたことだが、メイトギアをはじめとしたロボット達にその辺りのあれこれを負担してもらったからこそどうにかこうにか成立したものだ。

<人間社会で上手く生きられない者>

に対するフォローなんかは、それこそ生身の人間だったら、

『こんな奴、生きてる価値もない! なんでこんな奴を助けなきゃいけないんだ!?』

とか言い出すのが必ずいるからな。現場で実際にフォローするのを生身の人間に任せてたら本当に親身になれる者なんてごく小数だろう。その辺りは、電車などで優先席さえ譲ろうとしない人間の方が圧倒的に多い事実からも確認されてきたことだ。

聞いた話によれば優先席ですら実際に譲ろうとするのは百人に一人いるかどうかというレベルだったらしいじゃないか。

だから生身の人間に<人間社会で上手く生きられない者のフォロー>なんか安心して任せられるようなものじゃなかったんだろう?

対して、心や感情を持たないロボットは人間のように、

『こんなこと、やってられるか!』

と考えることもそもそもない。必要なフォローを予算が許す範囲内で徹底的に行ってくれるからな。

まあそれでも、現在のメイトギアとほぼ同じ仕様になった当初は、まだまだノウハウの蓄積が十分じゃなかったこともあって、ただただ人間を依存させてしまう形になったことも少なくなかったそうだ。基本的に綺麗事を並べるばかりで、

<綺麗事だけでは生きていけない人間という生き物>

に対する理解度もまだまだ甘かったそうだからな。で、<自立心>が結果として損ねられてロボットに強く依存してしまったり、逆に過剰に反発して反社会的な振る舞いに陥ってしまったりというのがあったとのこと。

これについてもノウハウの蓄積が進み人間の心理に対する解像度が桁違いに上がったことにより、かなり解消されてきたらしい。

そうしてようやく、<人間社会で上手く生きられない者のフォロー>が無理なく行えるようになっていったと。

ルイーゼのように<社会に大きく貢献できる者>だけじゃなく、本当に凡庸な能力しか持たない者に対してもな。

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