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第四世代
凛編 いい加減で雑な退場の仕方
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だが、ここまで何度も、
『人生ってのは思いがけないことの連続だ』
みたいな話をしてきても、やっぱり人間ってのは自分が認めたくないことは無意識のうちに認識の外に置こうとする習性があるらしい。
「凛の心臓が停止しました」
アンデルセンからの通信を受けたエレクシアが淡々と告げたそれに、
「な……!?」
「マジ……!?」
俺もシモーヌも言葉を失う。今さっきまで走の墓に参っていて帰宅の途に就いたところでこれか。
<思いがけないドラマチックな展開>
とも言えなくないだろうが、いやいや、こういうのは、
<盛り上がる展開>
じゃないだろ。むしろボロカスに叩かれるそれじゃないか? こんないい加減で雑な<退場の仕方>なんてのは。
でも、それでも、現実だからこそこういうことも起きるんだよな……
こんな誰も喜ばないことが……誰も得しないことが……
「俺は……」
このような形での<娘>の突然の訃報に、俺は自分でも分かるくらいに強く動揺していた。これまでで一番。
本当にまさかまさかのタイミングだよな。
「連是、引き返そう。向こうは任せておいて大丈夫だしね」
自身も動揺しつつ、それでも実の親というわけじゃないシモーヌがなるべく冷静に振る舞いつつ提案してくれた。
「……すまない……」
俺としても、子供達のことも心配だったが、コーネリアス号ならホテル代わりにするにも十分すぎるくらいの施設だ。このまま引き返してそっちで休んでもらうのもなんの問題もないと思う。
麗だけにはさすがに申し訳ないとも思いつつ。
だが、悪い。ここは俺の<親の情>を優先させてもらうことにする。<エゴ>を通させてもらうことにする。
「大丈夫だよ。お父さん。こういう時のためにちゃんとみんなとの関係を作ってきたんだよね?」
光がいつものように淡々と冷静に告げてくれた。
ああそうだ。ちゃんと関係を構築できていれば、こんな極めて稀な事態の際に少しばかり我を通させてもらっても大きな面倒にはならないはずなんだ。普段から勝手なことをしていて一方的に従わせようとしていたら、
『不満が爆発して』
しまうこともあるだろうが、その<不満>そのものが大きくなければ爆発まではそれだけ猶予もあるだろうさ。
「すまないアリアン、空港に引き返してくれ」
俺がそう口にすると、
「了解しました」
ロボットである<彼女>は、まったく躊躇することなく俺の意を酌んでくれた。そうして機体を揺らさないように大きくゆっくりと旋回し、空港への進路を取ってくれたのだった。
『人生ってのは思いがけないことの連続だ』
みたいな話をしてきても、やっぱり人間ってのは自分が認めたくないことは無意識のうちに認識の外に置こうとする習性があるらしい。
「凛の心臓が停止しました」
アンデルセンからの通信を受けたエレクシアが淡々と告げたそれに、
「な……!?」
「マジ……!?」
俺もシモーヌも言葉を失う。今さっきまで走の墓に参っていて帰宅の途に就いたところでこれか。
<思いがけないドラマチックな展開>
とも言えなくないだろうが、いやいや、こういうのは、
<盛り上がる展開>
じゃないだろ。むしろボロカスに叩かれるそれじゃないか? こんないい加減で雑な<退場の仕方>なんてのは。
でも、それでも、現実だからこそこういうことも起きるんだよな……
こんな誰も喜ばないことが……誰も得しないことが……
「俺は……」
このような形での<娘>の突然の訃報に、俺は自分でも分かるくらいに強く動揺していた。これまでで一番。
本当にまさかまさかのタイミングだよな。
「連是、引き返そう。向こうは任せておいて大丈夫だしね」
自身も動揺しつつ、それでも実の親というわけじゃないシモーヌがなるべく冷静に振る舞いつつ提案してくれた。
「……すまない……」
俺としても、子供達のことも心配だったが、コーネリアス号ならホテル代わりにするにも十分すぎるくらいの施設だ。このまま引き返してそっちで休んでもらうのもなんの問題もないと思う。
麗だけにはさすがに申し訳ないとも思いつつ。
だが、悪い。ここは俺の<親の情>を優先させてもらうことにする。<エゴ>を通させてもらうことにする。
「大丈夫だよ。お父さん。こういう時のためにちゃんとみんなとの関係を作ってきたんだよね?」
光がいつものように淡々と冷静に告げてくれた。
ああそうだ。ちゃんと関係を構築できていれば、こんな極めて稀な事態の際に少しばかり我を通させてもらっても大きな面倒にはならないはずなんだ。普段から勝手なことをしていて一方的に従わせようとしていたら、
『不満が爆発して』
しまうこともあるだろうが、その<不満>そのものが大きくなければ爆発まではそれだけ猶予もあるだろうさ。
「すまないアリアン、空港に引き返してくれ」
俺がそう口にすると、
「了解しました」
ロボットである<彼女>は、まったく躊躇することなく俺の意を酌んでくれた。そうして機体を揺らさないように大きくゆっくりと旋回し、空港への進路を取ってくれたのだった。
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