2,062 / 2,588
第四世代
丈編 常識の範囲内
しおりを挟む
ドローンは、いくらでも作ればいい。俺の曾孫を守るためならわざとぶつけて壊されたって惜しくない。
だから、一機だけじゃ怯まないなら、何機でもぶつけるまでだ。
そうして二機目が若いマンティアンの頭に衝突する。その程度じゃダメージにならないのは分かってるが、怯ませるだけでも意味はある。
と、相手にわずかな隙が生じると、淕も上手く体を捻って相手の鎌を外すことができ、間合いを取る。
しかし、不利な状況であることは変わらない。力は相手が上回ってるんだからな。
さりとて、逃げ出してしまっては縄張りを失う。
『生きてさえいれば勝ち』
なのが野生というものではあっても、まったく無関係なマンティアンが俺達の集落に隣接する縄張りを得るのは、安全保障上、大変にマズい。となれば、
『淕は俺の曾孫だから』
というだけでなく、他の家族や仲間のためにも、対処しなけりゃならない。そしてそれを実現するために駆けつけた者がいた。
「!?」
相手の若いマンティアンがギョッとなる。
無理もない。その視線の先にいたのは、<得体の知れない怪物>のごとき姿をした<ロボット>だったんだからな。
<ドーベルマンDK-a拾弐号機>
だった。
俺達の<人間としての暮らし>を守るために常に密林の中で哨戒任務にあたってくれていた拾弐号機が最も近い位置にいたことで、派遣したんだ。
これまでの運用でデータを蓄積し、それを基にアップデートを繰り返してきた今のドーベルマンDK-aであれば、並のマンティアンは敵じゃない。かつて現れた<龍然>のような常識外れの個体が相手だとさすがに今でもおそらく厳しいだろうが、今回のマンティアンは、
『標準内でもやや強い方』
といった程度だろうさ。まあ、丈から体の使い方を学んだ淕でさえ容易ならざる相手になる程度には強いにしても、それですら、常識の範囲内には収まっているわけで。
だが、それ以前に、今回の若いマンティアンは、拾弐号機の姿を見た瞬間に踵を返して密林の茂みの中へと姿を消した。
それというのも、かつて丈《じょう》の縄張りに侵入したのを撃退したのが、拾弐号機だったんだ。詳細な身体データを解析するとその時の個体だというのがはっきりと分かる。で、向こうも当然、自分が勝てなかった相手だというのに気付いて即時撤退を選択したということだ。
実に懸命な判断だな。
以前、拾弐号機と対峙した時にはいささか無鉄砲で無謀なところも見受けられたが、データを見る限りではそうだが、さすがに経験を活かして成長したというわけか。
だから、一機だけじゃ怯まないなら、何機でもぶつけるまでだ。
そうして二機目が若いマンティアンの頭に衝突する。その程度じゃダメージにならないのは分かってるが、怯ませるだけでも意味はある。
と、相手にわずかな隙が生じると、淕も上手く体を捻って相手の鎌を外すことができ、間合いを取る。
しかし、不利な状況であることは変わらない。力は相手が上回ってるんだからな。
さりとて、逃げ出してしまっては縄張りを失う。
『生きてさえいれば勝ち』
なのが野生というものではあっても、まったく無関係なマンティアンが俺達の集落に隣接する縄張りを得るのは、安全保障上、大変にマズい。となれば、
『淕は俺の曾孫だから』
というだけでなく、他の家族や仲間のためにも、対処しなけりゃならない。そしてそれを実現するために駆けつけた者がいた。
「!?」
相手の若いマンティアンがギョッとなる。
無理もない。その視線の先にいたのは、<得体の知れない怪物>のごとき姿をした<ロボット>だったんだからな。
<ドーベルマンDK-a拾弐号機>
だった。
俺達の<人間としての暮らし>を守るために常に密林の中で哨戒任務にあたってくれていた拾弐号機が最も近い位置にいたことで、派遣したんだ。
これまでの運用でデータを蓄積し、それを基にアップデートを繰り返してきた今のドーベルマンDK-aであれば、並のマンティアンは敵じゃない。かつて現れた<龍然>のような常識外れの個体が相手だとさすがに今でもおそらく厳しいだろうが、今回のマンティアンは、
『標準内でもやや強い方』
といった程度だろうさ。まあ、丈から体の使い方を学んだ淕でさえ容易ならざる相手になる程度には強いにしても、それですら、常識の範囲内には収まっているわけで。
だが、それ以前に、今回の若いマンティアンは、拾弐号機の姿を見た瞬間に踵を返して密林の茂みの中へと姿を消した。
それというのも、かつて丈《じょう》の縄張りに侵入したのを撃退したのが、拾弐号機だったんだ。詳細な身体データを解析するとその時の個体だというのがはっきりと分かる。で、向こうも当然、自分が勝てなかった相手だというのに気付いて即時撤退を選択したということだ。
実に懸命な判断だな。
以前、拾弐号機と対峙した時にはいささか無鉄砲で無謀なところも見受けられたが、データを見る限りではそうだが、さすがに経験を活かして成長したというわけか。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
アレキサンドライトの憂鬱。
雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。
アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。
どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい!
更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!?
これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。
★表紙イラスト……rin.rin様より。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる