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第四世代

深編 エピローグ

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新暦〇〇三八年五月二十五日



しんを送るためのささやかな葬儀を滞りなく済ませて、集落の中に新しく彼女の墓を築き、弔った。

錬慈れんじにどう説明するかも考えてはいたが、夜明けと共に遊び始める彼は昼前くらいには昼寝をしてしまうので、その必要はなくなってしまったが。

一応、

『いっぱいいっぱい頑張った後のたくさんのねんねは、土の中で眠るんだ』

みたいには言おうと思ってた。

もちろんただの詭弁の類いではあるものの、まったくの嘘でもないとは思う。

しんはたくさん頑張って、生き抜いて、そして眠りについたんだからな。

二度と覚めることのない眠りだが。

しかし同時に、とても安らかな眠りでもあると思う。

死産だった我が子を食うという、地球人の感覚からすれば大変な禁忌であり、法律上も<死体損壊罪>に当たるであろう行為ではありつつ、彼女に対しては結局、<罪の償い>も<因果応報>もなかった。

まあ、野生では彼女の行為は罪でもなんでもないんだから当然だ。それらはあくまで、

<地球人が地球人の社会で生きる上で必要な決まり事>

でしかないって話だ。

しんの人生は、改めてそれを俺に教えてくれたよ。

そして俺は安堵した。れんを食ったことで彼女が何らかの報いを受けるなら、翻って彼女をこの世界に送り出してしまった俺自身の責任だからな。

でも、それはなかった。なかったんだよ。

今の地球人の感覚ならわずか四十年足らずの短い人生だったかもしれないにしても、それでも決して<不幸>ではなかったと思う。

その事実を裏付けるかのように、しんの<寝顔>は本当に穏やかなものだった。

地球人の中には、

『自分の子を食うような奴には報いがあるべきだ!』

とか言う奴もいるだろうが、それが、

『自分達とは違う世界に生きている』

という事実を無視した、現実を見ない輩の戯言に過ぎないってのも、示してくれてるな。

正直、

『ざまあみろ』

とも思う。

俺があれこれ考えていたのも、ある意味じゃ、

しんに罪はない』

というのを立証したいという気持ちもどこかにあったのかもしれない。

そして実際、彼女は裁かれもしなかったし、罪を咎められもしなかった。彼女が生きてる世界では<罪>自体がないんだからこれまた当然だが。

もちろん、ここに人間社会を築くなら、

『人間が死産した我が子を食う』

なんてこそは禁忌にするしかないだろう。なにしろ人間は、<嘘を吐く生き物>だからな。本当は生きて生まれた子供を殺しておいて『死産だった』なんて言ったりするのも実際にいるしな。

それでも、

『生きる世界によって常識は変わる』

という事実を受け止められる社会であってほしいと、娘の墓に参りながら考えてたのだった。

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