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第四世代
深編 一途で献身的なヒロイン
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新暦〇〇三八年五月一日
こうして、何の前触れもなく、いや、前触れそのものはずっと以前からあってその通りになっただけだが、ついに誉がボスとしての役目を終えた。
だが、メイフェアも言っていた通り、群れの様子に大きな変化は見られない。実質的なボスとしての役目は轟にすでに移っていたことで、そのままの状態が続いてるだけだ。
轟も、現時点では四人ばかりパートナーを得て、子供も何人も生まれている。
かつては碧に横恋慕していたりもしたものの、それについてはまあ踏ん切りがついたのか、そんなことがあった気配すら今はない。だいたい、碧ももうパパニアンとしては熟女も熟女だしな。しかも、七年半ばかり前に<紅>と<拓>という子供が生まれて以降は、子供もできてない。
『子供ができない』
というのは、野生に生きる者としてはさすがに魅力も欠けるだろうさ。
あ、言っておくがそれは、
『彼女には価値がない』
という意味じゃないぞ? 価値がないなら誉が彼女を大事にしたりもしないだろうしな。ただ、
<自身の子を宿してくれるパートナー>
としての選択肢からはどうしても外れることになるというのも事実ではある。そういう意味での<魅力>は確かに失われているだろう。そういう現実があることも認めなきゃいけないさ。その上で、
『子供を産めることだけが価値とは限らない』
という事実も実際にあるんだ。じゃなきゃ誉は彼女に見向きもしないようになってただろうさ。でも、誉はちゃんと彼女を愛してるし、必要としてるのは見てれば分かる。とても仲睦まじいのは今でもなんだ。
それと同時に、ボスとしての誉は、命との間に<祈理>という子供ももうけてる。
その命は、今まさに<女ざかり>という年頃ではあるものの、命自身が割とその辺りは淡白なのか、あまりガツガツしてる様子がない。ボスにかまってもらえないとなると他の雄とも関係を持ったりすることも珍しくないパパニアンにあっても、誉一筋なんだ。
これもまた<多様性>の一種だろう。
『自分の子を残す』という点で考えればかまってくれないボスに拘らなくても、若く力をつけてきてる雄はいる。そういう将来有望な雄の子供を産むというのも、雌としては望むところだろうさ。
野生の生き物の一般論としては。
でもな、それが通用しない個体は確かにいるんだよ。
しかも地球人は好きだろう?
<一途な想い>
ってのが。その点では命はまさしく、
<つらい過去を持つ、一途で献身的なヒロイン>
と言えるだろうなあ。
ただ、野生じゃそれはむしろ少数派ではある。
こうして、何の前触れもなく、いや、前触れそのものはずっと以前からあってその通りになっただけだが、ついに誉がボスとしての役目を終えた。
だが、メイフェアも言っていた通り、群れの様子に大きな変化は見られない。実質的なボスとしての役目は轟にすでに移っていたことで、そのままの状態が続いてるだけだ。
轟も、現時点では四人ばかりパートナーを得て、子供も何人も生まれている。
かつては碧に横恋慕していたりもしたものの、それについてはまあ踏ん切りがついたのか、そんなことがあった気配すら今はない。だいたい、碧ももうパパニアンとしては熟女も熟女だしな。しかも、七年半ばかり前に<紅>と<拓>という子供が生まれて以降は、子供もできてない。
『子供ができない』
というのは、野生に生きる者としてはさすがに魅力も欠けるだろうさ。
あ、言っておくがそれは、
『彼女には価値がない』
という意味じゃないぞ? 価値がないなら誉が彼女を大事にしたりもしないだろうしな。ただ、
<自身の子を宿してくれるパートナー>
としての選択肢からはどうしても外れることになるというのも事実ではある。そういう意味での<魅力>は確かに失われているだろう。そういう現実があることも認めなきゃいけないさ。その上で、
『子供を産めることだけが価値とは限らない』
という事実も実際にあるんだ。じゃなきゃ誉は彼女に見向きもしないようになってただろうさ。でも、誉はちゃんと彼女を愛してるし、必要としてるのは見てれば分かる。とても仲睦まじいのは今でもなんだ。
それと同時に、ボスとしての誉は、命との間に<祈理>という子供ももうけてる。
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これもまた<多様性>の一種だろう。
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野生の生き物の一般論としては。
でもな、それが通用しない個体は確かにいるんだよ。
しかも地球人は好きだろう?
<一途な想い>
ってのが。その点では命はまさしく、
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と言えるだろうなあ。
ただ、野生じゃそれはむしろ少数派ではある。
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