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第四世代

深編 監視役

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新暦〇〇三八年四月十三日



俺の子供達が、家族が、仲間達が、平穏に暮らしているこの世界を、壊してしまいたくはない。

乱開発による環境破壊で壊してしまうこともそうだし、当然、人間同士の諍いのとばっちりで破壊されるなんてのも望んでないんだ。

「……」

錬慈れんじの相手をしながら水帆みなほの様子を見守りながらそんなことを考えてる俺を、またしんがじっと見ていた。

なんだか本当に彼女に見張られてる気さえしてくるな。自分の人生の終わりを悟って、それで自分をこの世界に送り出した俺が、この世界そのものをどうしようとしてるのかを『見届けよう』『監視しよう』とでも思ってるみたいに感じられてしまうんだ。

もちろん、普通の人間よりずっと野生に近い生き方をしてる彼女がそこまで考えてるとは、本気で思ってるわけじゃないさ。ただ『そんな気がする』ってだけだ。単なる<自意識過剰>だと言ってもいいだろう。

だがそう感じること自体が俺自身を律してくれるなら、それはそれで意味があるだろうなとも思える。

ああそうだ。

『誰かに望まれてる』

とか、

『期待されてる』

とか、

『亡くなった人達が見守ってくれてる』

とか、実際にそうだと確認されたことでなくても自らに言い聞かせることでモチベーションになることだってあるよな。俺は、ここで、

<人間社会>

を作り始めてしまった者の責任として、皆を苦しめたり不幸にしたりする社会を作らないようにしなきゃと思ってるし、それを忘れないためにも何らかの<理由>はちゃんと持っておきたいよ。

しんに見張られてる』

というのだって、その一つに十分なると思う。どこの誰かも知らない人間に見張られてたってそれほど気にならないかもしれないにしても、<実の娘>に見張られてるとなれば、頑張らなきゃと思えるってもんだ。他の奴はどうか知らないが、俺自身は身が引き締まる気もする。

しかもそれが、悪い気がしないんだよ。嫌じゃないんだ。俺にとっては。

何て言うかな、自分で自分の責任と向き合えてる感じがすると言うか。

もちろん、ただ『そんな気がする』だけの話でしかないのは分かってるさ。

でもな、『そんな気がする』ってだけなら、宗教なんてのはだいたいそうだし、お守りの類なんかもっとそうだろ。

<パワーストーン>なんてものには何の効果もないのは確認されているが、それでそういうものに頼ろうとする人間はいるし、効果を感じてるのもいるだろう。

だが、本人にとって効果があるのなら、それは意味があるんだろうさ。

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