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第四世代

深編 残虐な光景

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新暦〇〇三八年三月九日



『残虐な光景を見せると子供がショックを受ける』

とか言うのも地球人社会にはいたが、ここで暮らしてる俺からすると、

『ああ、整えられた環境でぬくぬくと暮らしてられる地球人ならではだなあ』

って感じてしまうのは事実だな。なにしろここじゃ、前にも言ったとおり、日常の光景にさえ、血や死体といったものが当たり前に映り込んでるし、狩った獲物をその場で貪り食う獣の姿が目に入るのもごくごく普通なわけで。だからそれはここじゃ決して<残虐な光景>じゃないんだよ。それ自体が<普通>なんだ。

ただ、だからといって、

『地球人社会も同じようになるべきだ』

とは言わないさ。そういうのはまた別の話だしな。

加えて、

『コンテンツにおける残虐シーンの是非を検討する』

ということ自体は別に悪いとは思わない。まったく無批判に何もかもを受け入れるというのも実際には不健全だと思うしな。そしてそれは、

『コンテンツにおける残虐シーンを一切なくしてしまえばいい。と考えるのも不健全だろう』

ということでもある。

『どちらか一方に極端に走るというのがマズい』

というだけだと俺は思ってる。俺が散々あれこれ批判的なことを言ってるのだって、必ずしもそれが確実に実現されると思ってるわけじゃないという上でのことだし。

あくまで、

『わきまえた方がいいんじゃないか?』

『それをわきまえずにいると何が起こるのか考えた方がいいんじゃないか?』

ってだけのことだ。

いくら<人間の良さ>や<愛の素晴らしさ>を描いたコンテンツが作られようとも、犯罪も紛争も完全にはなくなってないってのも事実だしな。

それに、

『<人間の良さ>や<愛の素晴らしさ>を喧伝されたところで実際の人間(地球人)の振る舞いを見てると白けてくる』

というのも正直言ってある。

日常的に誰かに対して攻撃的に振る舞う奴は、身の回りにいくらでもいるだろ? ネットの中にはそれこそ誰かを死ぬまで追い詰めようとしてる奴は無数にいるだろ? そんな行状をまず何とかしないと、<人間の良さ>や<愛の素晴らしさ>なんてのはどこまで行っても、

<絵に描いた餅>

でしかないって。そしてそれをなんとかできるのは<コンテンツ>じゃなく<生身の人間>自身のはずだ。コンテンツなんかよりも、身近な大人の振る舞いこそが圧倒的に力のある手本になるんだよ。

もちろんそこで、

<綺麗事ばかり並べておいて実際にはロクでもないことをしてる人間の見本>

なんてものを見せてしまっても、強烈な影響を与えることになるけどな。

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