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第四世代
深編 好ましくない慣習
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新暦〇〇三八年二月二十五日
深は、ぐうたらして怠惰なように見えて、実際には常に周囲の状況を探っている。
これは、野性が強い生き物であれば当然のことだろうな。なにしろ、ほんの些細な油断で命を落としてしまうような世界に生きてるわけだし。
確かに、深は俺達の集落を寝床にしてることで本当に野生の世界で生きてるのに比べればまだ安全かもしれなくても、だからといって完全に普通の人間社会そのものに馴染んでしまってるわけでもない。あくまで、
<人間社会に紛れ込んでいる野生の獣>
的な存在という感じか。
だが、それでいい。地球人社会だとさすがに野生の感覚が残っているトラやライオンを放し飼いにしてたらマズいとしても、この集落じゃ、俺とシモーヌと錬慈以外は、そもそも高い身体能力と危機管理能力を持っていて、露骨に敵対してるわけでもない深を相手に後れを取ることもまずないしな。
その上で、エレクシアもイレーネもドーベルマンDK-aもホビットMk-Ⅱも待機してくれている。錬慈にぶつかりそうになった萌花をライラが受け止めてくれたように、いざという時に対処してくれる。
これがロボットの役目の一つだ。
人間と違って常にデータのやり取りをして連携することもできるしな。だから<死角>というものがほとんどないんだよ。
ただし、だからといって安心しきってしまうのもマズいんだろうな。以前、萌花がついつい一人で密林に入っていってしまって、危うくアクシーズに襲われそうになったなんてこともあったわけで。
どんなに対策を講じていても、エアポケットのように抜け落ちることはあると思う。
この世界というのはそういうものだ。
『備える』のと同時に、
『どんなに備えていても完璧というものは有り得ないというのを忘れない』
のも大事なんだ。これまでの経験で俺はそれを学んだよ。
そして俺が学んだそういう諸々を、子供達にも伝えていきたい。<親の役目>としてな。
<好ましくない慣習>などがあればそれを改めていけるような柔軟性も持ってほしい。
まあ、そもそもここではそういう<好ましくない慣習>ってのをはびこらせないようには心掛けていきたいけどな。
人間社会でもあっただろう?
『パワハラなんてあって当たり前』
とか考えてパワハラをしてたような奴が歳を取って高齢者施設に入って職員に対して横柄な態度を取ったり暴言を吐いたり時には暴力をふるったりなんてことが。
そういう事実を客観的に見てちゃんと改めていけないと、そりゃ社会もよくなってはいかないさ。
今だからこそそれが身に染みて分かる。
深は、ぐうたらして怠惰なように見えて、実際には常に周囲の状況を探っている。
これは、野性が強い生き物であれば当然のことだろうな。なにしろ、ほんの些細な油断で命を落としてしまうような世界に生きてるわけだし。
確かに、深は俺達の集落を寝床にしてることで本当に野生の世界で生きてるのに比べればまだ安全かもしれなくても、だからといって完全に普通の人間社会そのものに馴染んでしまってるわけでもない。あくまで、
<人間社会に紛れ込んでいる野生の獣>
的な存在という感じか。
だが、それでいい。地球人社会だとさすがに野生の感覚が残っているトラやライオンを放し飼いにしてたらマズいとしても、この集落じゃ、俺とシモーヌと錬慈以外は、そもそも高い身体能力と危機管理能力を持っていて、露骨に敵対してるわけでもない深を相手に後れを取ることもまずないしな。
その上で、エレクシアもイレーネもドーベルマンDK-aもホビットMk-Ⅱも待機してくれている。錬慈にぶつかりそうになった萌花をライラが受け止めてくれたように、いざという時に対処してくれる。
これがロボットの役目の一つだ。
人間と違って常にデータのやり取りをして連携することもできるしな。だから<死角>というものがほとんどないんだよ。
ただし、だからといって安心しきってしまうのもマズいんだろうな。以前、萌花がついつい一人で密林に入っていってしまって、危うくアクシーズに襲われそうになったなんてこともあったわけで。
どんなに対策を講じていても、エアポケットのように抜け落ちることはあると思う。
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のも大事なんだ。これまでの経験で俺はそれを学んだよ。
そして俺が学んだそういう諸々を、子供達にも伝えていきたい。<親の役目>としてな。
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まあ、そもそもここではそういう<好ましくない慣習>ってのをはびこらせないようには心掛けていきたいけどな。
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今だからこそそれが身に染みて分かる。
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