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第四世代
深編 無暗に意味を求めようとしない
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新暦〇〇三八年二月二十一日
そうして、もういつ人生の幕を閉じてもおかしくない深を見守るために俺は彼女に意識を向けるわけだ。
が、いかんせん、錬慈を育ててる上に、水帆も我が子として迎えたからな。深にばかり構ってることもできないのも事実ではある。
もっとも、彼女自身、もうそこまで俺に構ってもらう必要も感じていないようだ。ただのんびりと、余生を過ごせていればいいだけらしい。
明は光に構ってもらおうとして毎日のように顔を出すようになったものの、それについては、これまで日常的になかなか顔を合わすことがなかったからというのもあるのかもな。
対して深は、もうほぼ毎日、嫌でも顔を合わしてる。そして声を掛けてもらったりもする。
食事のために密林に入っていく時でも、誰かがそれを見掛ければ、
「いってらっしゃい、気を付けてね」
と声を掛けてくれるんだ。
まあ、深の方は、
「……」
意識こそ向けてくれるものの別に返事をするわけでもないけどな。あ、いや、意識を向けて耳を動かしたりするのが<彼女らにとっての返事>と言えばそうなのか。
とにかくそんな感じでマイペースに日々を過ごしてる。地球人のように、
『することがなくて暇すぎて頭がおかしくなる!』
的に文句を言うこともない。彼女達にとっては、
『自分が生きている』
というの自体に意味があるってことなのかもな。それ以上に無暗に意味を求めようとしないんだ。
俺も、こうして延々とあれこれ考えることはするものの、だからといって自分の生に意味を求めようとは別に思わない。そっちを考え始めるとそれこそ泥沼にハマりそうな予感があるから。
『考える』ことはしつつ『悩む』ことは避けようと思ってる感じか。
答の出ないことで悩んだところでリソースの無駄になるってのは、地球人社会にいた頃に心底思い知ったよ。精神的に追い詰められるだけだ。
『自分はなぜここにいるのか?』
『自分はなぜ生きているのか?』
『自分は何のために生きているのか?』
『人間が存在する意味は?』
それらは、<答えの出ない疑問>の典型的なものだよな。
だから、考えることはしても答は求めない。もしくは、
『自分なりの答を出して自分なりに納得する』
でいいと思う。深達を見ていればこそそう感じるんだ。彼女達はたぶん、<自分なりの答>ってのをちゃんと得てて、それに基づいて生きてるんだろうなって気がするんだよ。
だから悩まない。くよくよしない。目の前の事態に随時対処すればそれでいい。
実にシンプルだ。そして強い。
羨ましいよ。
そうして、もういつ人生の幕を閉じてもおかしくない深を見守るために俺は彼女に意識を向けるわけだ。
が、いかんせん、錬慈を育ててる上に、水帆も我が子として迎えたからな。深にばかり構ってることもできないのも事実ではある。
もっとも、彼女自身、もうそこまで俺に構ってもらう必要も感じていないようだ。ただのんびりと、余生を過ごせていればいいだけらしい。
明は光に構ってもらおうとして毎日のように顔を出すようになったものの、それについては、これまで日常的になかなか顔を合わすことがなかったからというのもあるのかもな。
対して深は、もうほぼ毎日、嫌でも顔を合わしてる。そして声を掛けてもらったりもする。
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「いってらっしゃい、気を付けてね」
と声を掛けてくれるんだ。
まあ、深の方は、
「……」
意識こそ向けてくれるものの別に返事をするわけでもないけどな。あ、いや、意識を向けて耳を動かしたりするのが<彼女らにとっての返事>と言えばそうなのか。
とにかくそんな感じでマイペースに日々を過ごしてる。地球人のように、
『することがなくて暇すぎて頭がおかしくなる!』
的に文句を言うこともない。彼女達にとっては、
『自分が生きている』
というの自体に意味があるってことなのかもな。それ以上に無暗に意味を求めようとしないんだ。
俺も、こうして延々とあれこれ考えることはするものの、だからといって自分の生に意味を求めようとは別に思わない。そっちを考え始めるとそれこそ泥沼にハマりそうな予感があるから。
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だから、考えることはしても答は求めない。もしくは、
『自分なりの答を出して自分なりに納得する』
でいいと思う。深達を見ていればこそそう感じるんだ。彼女達はたぶん、<自分なりの答>ってのをちゃんと得てて、それに基づいて生きてるんだろうなって気がするんだよ。
だから悩まない。くよくよしない。目の前の事態に随時対処すればそれでいい。
実にシンプルだ。そして強い。
羨ましいよ。
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