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第四世代
閑話休題 メイの挑戦・前編
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メイは、マンティアンである。そして、マンティアンでありながらその外見は地球人そのものだった。
地球人である錬是とマンティアンである刃を曾祖父母に持ち、角と明を祖父母に持ち、明の実子の鋭と先祖返りを起こし地球人そのものの姿で生まれた玲を父母に持つ彼は、見た目こそ地球人そのものでありつつ振る舞いの点では紛れもなくマンティアンであった。
一糸まとわぬ姿で気配を絶ち身動き一つせず周囲の景色と一体化し、気付かずに獲物が寄ってくれば躊躇なく襲う。
「キッ!」
この時も、ネズミに似た小動物が彼の前を通り過ぎようとした瞬間にがっしりと掴み捕えていた。それをそのままガツガツと貪り始める。
実年齢ではようやく二歳になるところでありながら見た目は五歳くらいとは言えど、地球人の子供にできることではなかっただろう。
このため、素の身体能力だけでも地球人とは比較にならないことが分かる。
まあ、身体能力以前に、
『生きた動物をそのままで食う』
などということは、地球人の子供はほとんどしないだろうが。メンタリティそのものは確実に野生の獣に近いのだろう。加えて、成体のマンティアンに比べればさすがに力も劣るものの、彼と同等のサイズ感の肉食獣と比べても決して引けは取らないのは確かである。それどころか、むしろ優位であるかもしれない。マンティアンとはそういう生き物なのだ。
それもあってか、彼はもうすでに密林の中に自分で踏み入って、自ら世界を広げていこうとしているようだった。
「……」
彼の眼前に広がる鬱蒼とした密林。地球人の目ではそこにどんな生き物が潜んでいるのかは容易には捉えられないが、彼はすでに無数の生物の姿を視界に捉えてもいた。
そして、
「フゴッ……フゴッッ……!」
なんとも荒い鼻息が耳に届いても来る。下草に隠れてしまっているが、どうやらそこに獣がいるようだ。鼻息だけで『強そうだ』と感じる獣が。
するとメイは、気配を消して、近くの木と一体化してしまった。その獣についてはやり過ごすことにしたようだ。
彼はとても強いが、しかし決して<無敵>ではない。特に今の時点では。ゆえにクレバーに判断する。
その彼の目の前に、ガサリと下草をかき分けて黒っぽい毛に覆われた<塊>が現れた。
イノシシによく似た印象のある獣、<猪竜>だ。背丈自体はメイよりも明らかに小さいが、体積はそれこそ三倍くらいありそうだ。全身を覆う毛の上からでも岩のような筋肉を備えているのが分かる。
まさしく、
<動く岩>
という風情の獣であった。
地球人である錬是とマンティアンである刃を曾祖父母に持ち、角と明を祖父母に持ち、明の実子の鋭と先祖返りを起こし地球人そのものの姿で生まれた玲を父母に持つ彼は、見た目こそ地球人そのものでありつつ振る舞いの点では紛れもなくマンティアンであった。
一糸まとわぬ姿で気配を絶ち身動き一つせず周囲の景色と一体化し、気付かずに獲物が寄ってくれば躊躇なく襲う。
「キッ!」
この時も、ネズミに似た小動物が彼の前を通り過ぎようとした瞬間にがっしりと掴み捕えていた。それをそのままガツガツと貪り始める。
実年齢ではようやく二歳になるところでありながら見た目は五歳くらいとは言えど、地球人の子供にできることではなかっただろう。
このため、素の身体能力だけでも地球人とは比較にならないことが分かる。
まあ、身体能力以前に、
『生きた動物をそのままで食う』
などということは、地球人の子供はほとんどしないだろうが。メンタリティそのものは確実に野生の獣に近いのだろう。加えて、成体のマンティアンに比べればさすがに力も劣るものの、彼と同等のサイズ感の肉食獣と比べても決して引けは取らないのは確かである。それどころか、むしろ優位であるかもしれない。マンティアンとはそういう生き物なのだ。
それもあってか、彼はもうすでに密林の中に自分で踏み入って、自ら世界を広げていこうとしているようだった。
「……」
彼の眼前に広がる鬱蒼とした密林。地球人の目ではそこにどんな生き物が潜んでいるのかは容易には捉えられないが、彼はすでに無数の生物の姿を視界に捉えてもいた。
そして、
「フゴッ……フゴッッ……!」
なんとも荒い鼻息が耳に届いても来る。下草に隠れてしまっているが、どうやらそこに獣がいるようだ。鼻息だけで『強そうだ』と感じる獣が。
するとメイは、気配を消して、近くの木と一体化してしまった。その獣についてはやり過ごすことにしたようだ。
彼はとても強いが、しかし決して<無敵>ではない。特に今の時点では。ゆえにクレバーに判断する。
その彼の目の前に、ガサリと下草をかき分けて黒っぽい毛に覆われた<塊>が現れた。
イノシシによく似た印象のある獣、<猪竜>だ。背丈自体はメイよりも明らかに小さいが、体積はそれこそ三倍くらいありそうだ。全身を覆う毛の上からでも岩のような筋肉を備えているのが分かる。
まさしく、
<動く岩>
という風情の獣であった。
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