未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます（Ver.02）

第四世代

彗編 構ってほしいという気持ち

新暦〇〇三七年七月八日



『子供が自分の思い通りにならない』

そういう意味じゃ、キャサリンはまさにそれのような気がする。

二歳を超え、同じビアンカの子である黎明れいあよりも外見上の成長ははるかに早く今では十歳を過ぎたくらいの見た目になったキャサリンには、＜脱走癖＞があった。とにかく村から勝手に出ていってしまうんだ。

ただ、それは＜自立心の芽生え＞と言うよりは、たぶん、

＜構ってほしいという気持ち＞

だったんだろうと思う。実は脱走しても村が完全に見えなくなるほどまでは離れていってしまわなかったんだ。だからビアンカの能力なら追い付くのは難しくなかった。しかも、ビアンカの姿が見えると、今度は＜鬼ごっこ＞のようにして逃げ回るし。

するとビアンカは、全力を出してすぐさま捕まえるんじゃなく、敢えて手を抜いてしばらく鬼ごっこに付き合う。ケインを背負った状態で。黎明れいあは久利生くりうや灯あかりやルコアに任せて。

この行動について、ルコアも、

「なんとなく分かります。構ってほしいんでしょうね」

と口にしていた。ルコアも、サーペンティアンとして生を受け、俺達に保護されるまでの間、まともに動かない体を引きずって数百メートルを這い、約二日、ほぼ食事も口にしない状態で耐えた反動か、家族もいない見知らぬ世界に怪物のような姿で一人放り出された恐ろしさから逃れたかったのもあってか、すごくビアンカに甘えていた時期がある。

今でもその片鱗は残しつつも、随分と成長したと思う。顕現してからはすでに三年が経ち、見た目にも十代半ばくらいの印象だ。振る舞いも大人っぽくなった。こんな世界だからいつまでも子供のままじゃいられないというのもあるんだろう。

未来みらいに黎明れいあに蒼穹そらにケインにイザベラにキャサリンと、次々子供達も生まれてきて、血は繋がってなくても＜お姉ちゃん＞としても頑張ってくれてるしな。

特に未来みらいは、＜姉＞としてじゃなくて＜一人の異性＞として意識している予感もあったり。

それについてもどうなるかは分からないが、ルコア自身も悪からず思っている風でもある。一見すると振る舞いがガサツそうな未来みらいではありつつ、牙斬がざんの襲撃の際に自分を庇って大怪我をしたルコアに対しては、単純な恋心じゃない気持ちもあるみたいで、そんな彼の想いも理解してくれているんだろう。

この辺りも、人間の気持ちの複雑さを表してる気がするよ。

だからこそ、子供も自分の思い通りにはならない。

「はい、捕まえた♡」

キャサリンに追い付いたビアンカが笑顔でそう言えるのも、『自分の思い通りにはならない』のが分かってるからだな。