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第四世代

玲編 嫁姑問題

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新暦〇〇三五年九月二十三日



龍準りゅうじゅんの反応は、捉えられたり消えたりを繰り返していた。信号を傍受できる範囲のギリギリ辺りを彷徨っているようだ。正直、その辺りで縄張りを確保してくれると助かる。それはつまり、そこの縄張りを持っているマンティアンの死を意味するが、自身の身内を優先するエゴについて悩む必要ももう感じない。

条件は同じなんだ。他者が自身の身内を優先することで俺の家族が見捨てられる形になる場合も有り得るというのも覚悟の上だよ。

これもまた、<生きる>ってことだしな。

そんな中でも。めいは穏やかに生きてる。今日もひかりに絵本を読んでもらいに来てる。れいえいも一緒だ。

考えてみればれいにとってめいは<姑>なんだよな。しかし、地球人によく見られるような<嫁姑問題>は、野生ではまず見られない。

何故か? 

簡単だ。野生の生き物は、巣立った後はもう同じリソースを奪い合う<敵>だからな。老いて自身の子の世話になるなんてことがそもそもほぼ成立しない。

だから、血の繋がった親子であってもそうだから、嫁姑なんてそれこそ<敵>以外の何ものでもない。嫁が姑を敬うなんてこともない代わりに、姑が嫁の世話になろうなんて考えもしないんだよ。

嫁の世話になんてなろうと考えるから、<嫁姑問題>なんてくだらないことが起こるんだろう? 子供を独り立ちさせたらもう親には責任がないって言うなら、そもそも子供の世話になろうなんて考えるなよ。

親が子供を養育するのは、子供の承諾を得ることなく勝手にこの世に送り出した親自身が自らの尻拭いをしてるに過ぎない。野生の生き物で、

『育ててやった恩を返せ。それが育ててもらった者の務めだ』

なんて能書きを垂れるのがいると思うのか? それがすべてを物語っているだろう?

『子供に育ててやった恩を売ろう』

なんて考えそのものが<甘え>なんだよ。その一方で、自分を育ててくれた親を労いたいと考える子供も中にはいるというだけの話だ。子供が自主的にそうしたいと言うなら好きにすればいいものの、親の方から強要するのは<傲慢>以外の何ものでもない。

何度も言うように、俺は自分が親になったからこそそれを実感する。

めいが、息子であるえいと番ったれいに対して、

『自分を敬え』

と言わないのが何よりの証拠だ。めいはただひかりに絵本を読んでもらいに来てるだけで、えいや、ましてやれいに干渉するつもりはないってことだ。

野生のマンティアンとして対峙するなら衝突もあるだろうが、今のめいはそのつもりもないみたいだからな。

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