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第四世代

玲編 いる意味

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新暦〇〇三五年八月十一日



れいがここでおとなしく暮らせてるのも、彼女に、

<ここで暮らすことのメリット>

を提供できてるからだと思う。決してボスである俺が彼女に対して自分の強さを示せてるからじゃない。そういうことだ。

<威厳>は示すものじゃない。本人の在り様から自然とにじみ出るものだと俺は思う。それどころか、

<実態が伴わない見せかけの威厳>

なんか、逆効果だろ。完全に。ちょっとしたことでボロが出るだろうしな。で、実態が伴わない、中身がない、ってことで侮られる。見下される。

そういうもんだと思うけどな。

俺はそれじゃダメだと思うから、自分にそれだけの中身があると思わないから、むしろ<威厳>なんかに頼ろうとは思わないんだ。

まず間違いなく実態が伴わないことを見抜かれて舐められるし。

だったら最初からそんなもんに頼らない方が確実だろ。単純に仲良くしておいた方がメリットがある、敵対しないこと自体がメリットに繋がる、ってのを提示しておけばいいだけだ。

それに、人間の場合は、

『自分の存在を受け止めてもらえる』

ってこと自体が大きなメリットにならないか? 俺がエレクシアを連れてたのも結局はそれだからな。メイトギアの彼女なら、何があっても俺を見捨てない。俺を受け止めてくれる。それが分かってるから彼女を必要としてた。<戦力>としても確かに重要だが、それ以上に<拠り所>だったんだよ。

かつての俺にとっては。

まあ、今でも拠り所の一つであることに変わりはないが。

自分にそういう部分があるのを認めるからこそ、俺の家族や仲間にとっても俺の存在が拠り所になるように心掛けているんだ。そしてそれが、強力な<メリット>になる。

力で従わせなくても、ここにいる理由にはなる。

れいは、その在り様はマンティアンそのものだが、マンティアンが持つ<天然の装甲>を彼女は持たない。これは、密林の中で野生のマンティアンとして生きていくにはあまりにも大きすぎるハンデだ。マンティアンは自身のその天然の装甲そのものを武器としても使う。頭突きなんかはその最たるものだな。

蹴りの威力だって、脚が天然の装甲に覆われているからこそ格段に上がる。それを持たないれいにはどう足掻いたって補えない。しかしここにいれば、敵対行動を取るマンティアンは近付いてこないし、そもそも誰も強い敵対行動はとらない。天然の装甲を持たなくたって自分の身が守れる。

その上で、人間としての知能もそれなりに備えてる彼女にとって自分を蔑ろにされたりしないここは、いる意味があると思うんだ。

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