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第三世代

蛮編 親子共々

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『がんばれ! 負けるな!』

人間はこういう時、ついそんなことを口にしてしまうこともあるよな。俺自身、そのパルディアが子を連れてたから、つい、心情的に肩入れしてしまった。けれど現実は非情だ。そんな想いがまったく届かないことは珍しくない。むしろそれが届くことの方が珍しいからこそ、物語として成立するのかもしれない。

そしてここではそう上手くはいかなかった。助けを向かわせようとしてもどのみち間に合わなかった。ヒト蛇ラミアの爪がパルディアの左の太腿を大きく切り裂く。

「ギャアッッ!!」

悲鳴が漏れ、左足が確実にまともに動かなくなる。筋肉そのものがいくつも断裂したらしい。ここまででギリギリだったのだから、もはや決着はついたも同然だっただろう。

けれど、それでもパルディアは諦めない。諦めないが、それは、

『親子共々生き延びる』

ということを諦めていないという意味ではなかったようだな……

「グアアッッ!!」

パルディアの母親は我が子の首根っこを掴み、渾身の力を込めて放り投げた、極力遠くへと。

「ギャッ!?」

突然のことに子供も悲鳴を上げるものの、何とか木の枝に捉まる。捉まって母親の下に戻ろうとする。なのに母親は、そんな我が子に向かって、

「ガアアーッッ!!」

と、

『貴様を食い殺す!!』

と言わんばかりの恐ろしい形相で睨み付けて、吠えた。

「ヒギャッ!!」

子供はそんな母親を恐れて、一目散に逃げ始める。ドローンはそんな子の姿も捉えていた。

ロクに動かなくなった左足を引きずりながらもヒト蛇ラミアの攻撃を何とか躱していた母親は我が子の姿が見えなくなったことに安心したのか、一瞬、ホッとしたような表情になったのが、こちらもドローンのカメラに捉えられていた。

直後、ヒト蛇ラミアの右腕がパルディアの母親の首を捕らえ、同時に肉も気道も脛骨も一まとめに握り潰す。

「ッッ!!」

悲鳴すら上げられず、パルディアの母親は死んだ。壊れた人形のように頭が力なくぐわんぐわんと振られて、目は虚空を見詰める。

弛緩した体はじゃあと小便を漏らすが、ヒト蛇ラミアはそれすらお構いなしでパルディアの肩口に食らい付き、貪り始める。

この母親が逃がした子は、まだ一歳にも満たない、ようやく少しずつ狩りの練習を始めて昆虫やトカゲのような小動物が捕まえられるようになったばかりって感じだった。そんな子供が母親を失いこの先も果たして生きていけるのかは、まったく分からない。

だが、そんな形で早々に親を喪った個体がすべてすぐに死ぬかと言われると、実は必ずしもそうではないけどな。

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