上 下
1,362 / 2,588
第三世代

新編 命の選別というタブー

しおりを挟む
<知能>を基準にして『人間か否か?』を判別することは事実上不可能だ。知能で区別するなら、

『子供は人間じゃない』

ということになってしまう。しかしそれはおかしい。

『子供は、成長と共に知能が一定の水準に達することが期待できる』

として、

『だから人間として認めてもいい』

などというのも、ただの詭弁だ。<未来に起こりえるかもしれないこと>を<命を選別する基準>に組み込むなど、愚の骨頂だしな。幼い子供は、その、

『幼い子供の時点で人間であるかどうか?』

を厳密に規定する必要があるんだ。だから、知能を基準点にすることはできない。たとえ体が大きくなっても知能がそれに追いつかなくても、だ。

これは、

<知能を基準にした選民思想>

を広めようとした者達に対して明確な<NO>を突き付けるために規定された。

まあ、現在は、たとえ遺伝子疾患であっても治療できるだけの医療技術があるから、

『疾患によって知能が失われる』

ということ自体がほとんどなくなったことで事実上の解決を見たんだが、それ以前には<知能を基準にした選民思想>はたびたび広まりを見せようとしたこともあったらしい。

今でも厳密には消えていないしな。

『人間としての知能を持たない者は、他人に危害を加える可能性がある!』

というのが、<知能を基準にした選民思想>を肯定する連中の根拠の一つらしいが、そんな、

『実際に起こってもいないことを理由に命の選別を行うことはできない』

んだよ。だいたい、幼児だって皆が皆、攻撃的か? 違うだろう? 幼児が攻撃的になる時には、その背景に、

<攻撃的になる理由>

が必ずあるんだよ。『知能が高い低い』だとか、『社会の常識が理解できるできない』とは別の理由がな。

<知能が低く、社会の常識が理解できない者>

であっても、全員が全員、他人に攻撃的になるわけじゃない。そんな当たり前の事実を無視してなにが、

『自分達は現実を見ている』

だ。

『<命の選別というタブー>に自分達は切り込む!』

だとか威勢のいいことを言ってるが、それ以前に、

<自分達にとっての都合の悪いタブー>

については見て見ぬフリをしてる時点で、ただの<ごっこ遊び>なんだよ。

『当人の周りの人間達の対処そのものが適切じゃないから、攻撃的にもなるし反抗的にもなるんじゃないのか?』

という<タブー>についてな。

<親の愛情>だとか<他人の善意>だとか、そういう<綺麗なもの>が実は<それをする側の勝手な思い込み>であり、<押し付け>でしかないかもしれない。ということから目を背けてて、何が『タブーに切り込む』だ。

俺が、<愛>や<善意>や<思いやり>といった言葉をほとんど使わないのは、俺自身がそんなものを信用してないからだしな。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...