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第三世代

ビアンカ編 大命題

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素戔嗚すさのおも、ビアンカの様子に何かを察したらしい。彼女が見守る前で、ドーベルマンMPMを相手に力比べをするようになった。

たぶん、

『ビアンカが見守ってくれている』

というのが大事なんだろう。愛されてるな、ビアンカ。

だがそれは、彼女が素戔嗚すさのおをしっかりと受け止めるという姿勢を示したからこそのものであることも、おそらく事実だ。

フィクションなどによくある、

『<優しい人>が愛情を注ぎ、<愛>や<優しさ>の大切さを滔々と説く』

というのではなく、素戔嗚すさのお自身がもてあましていた<衝動>を、<憤り>を、正面から受け止めてくれた上で、<圧倒的な力>も示したからこそ、彼にとっての<説得力>になったんじゃないかな。

『自分よりも圧倒的に強い相手が、自分のことを受け止めてくれている認めてくれている』

という手順が必要だったんだろう。未来みらいを相手にしていたことで、それも実感できていた。

しかも、ただ痛め付けて力の差を思い知らせるというのでもない、絶妙な力加減。この辺りは、軍人だからこそ詳しかったのかもな。

つくづく、

『ビアンカでなくちゃ駄目だった』

気がする。久利生くりうじゃ彼の力を真正面からでは受け止められなかっただろうし、ドーベルマンMPMでは異質すぎて馴染めなかったかもしれないし、それはハートマンやグレイでも駄目だったと思う。

あかりやルコアでは、やや力不足だった上に、何より、彼に大きな怪我をさせずにあしらうということができなかった可能性が高い。

エレクシアやイレーネでももしかすると大丈夫だった可能性もありつつ、ビクキアテグ村ではビアンカが最適だったんだろうな。

そうだ。ビクキアテグ村はビクキアテグ村で対処できる必要がある。牙斬がざんのような極めて特異な事例については<エレクシアの派遣>のようなことも必要だったにせよ、おそらく夷嶽いがくまでは対処もできてたと思う。

牙斬がざんがこちらの想定を上回ってきただけだ。しかも牙斬がざん自体、エレクシアの左前腕を破壊してみせるようなとんでもない存在だったし、こういうのに対してはさすがに一つの村だけで対処できるようにするというのも現実的じゃないだろうな。

そんなわけで、素戔嗚すさのおの件については、どうやら何とかなりそうだ。彼自身が他の場所で何か無茶をして命を落とすようなこともあるかもしれないが、さすがにそこまではビアンカの手も届かないだろうし、覚悟はしなきゃな。

で、ここから先は、ビアンカの妊娠・出産をいかに無事に完遂するかというのが大命題だな。

「ビクキアテグ村で二人目ってことじゃん。そりゃ全力でサポートするに決まってんじゃん。ね、ルコア?」

「うん。もちろん!」

あかりとルコアが、笑顔でそう顔を見合わせたのだった。

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