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第三世代
閑話休題 「夷嶽とドーベルマンMPM その3」
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サイゾウの近似種の一頭を見事しとめた夷嶽は、逃げていく群れを見送り、それからゆっくりと獲物を貪り始めた。
獲物の血や泥が全身にこびりつき、もうすっかり、元が透明だったなどとは思えない、それこそ普通の鵺竜と変わらない見た目になった夷嶽がガツガツと獲物を食している姿は、本当にただの動物の一匹に過ぎないと実感するな。
たぶん、人間の気配が近くになければこういうものなんだろう。
凶がいた<グンタイ竜>の群れは、恐ろしい繁殖力と食欲で生態系を破壊しかねなかったし、蛟は自身が生物として破綻した無理な構造をしていたことで短命だったであろう上にやはり異常な凶暴さを見せていたが、思えば、嶽は、鵺竜の一種として見れば、生態そのものはそんなに異常じゃなかった気がする。銃砲の存在を知っているようなそぶりを見せたり電磁波によって電磁加速質量砲の発射タイミングを完璧に捉えてみせたりというのはさすがに異様でも、それ以外の点では、な。
その嶽に非常に近い生物として生を受けた夷嶽も、<この台地の上に紛れ込んだ鵺竜>と考えるなら、穏当に生きることもできるんじゃないだろうか。
もしかすると、麓に下りればそれこそ近い種のパートナーでも見付けて、子を成すことだってできるかもしれない。
ただ、残念ながら、今の俺達には、千メートル級の断崖絶壁を安全に麓まで夷嶽を移送できる方法がないんだ。すまん。
それで言うと、牙斬が<超ルプシアン>だったことは、不幸中の幸いだったかもしれないな。
なお、牙斬の方ももちろん監視しているが、どうやら、右腕も回復してきているらしい。杭として射出した尺骨が再生してきているのかもしれないな。
一度の戦闘では一発しか使えないのだとしても、そうやって再生するならやはり脅威ではある。
生物として考えたら無茶苦茶な能力だが。
うん、そんな牙斬と比べれば夷嶽はまっとうな<動物>だよ。<電磁パルス攻撃>だって、機械が相手じゃなきゃ使いどころもあまりないだろうし。
食事を終えた夷嶽は、頭を上げて、周囲を見回した後、物思いにふけるかのように遠くを見詰めていた。
それからおもむろに、二百メートルほど離れたところで待機していた<十七号機><二十三号機><二十五号機>目掛けてのそりと歩き出す。木や草の陰に隠れていたから視覚的には見えていないはずだが、やはり、ロボットである<十七号機><二十三号機><二十五号機>らが出す僅かな電磁波を探知しているんだろう。そして、どこまでもどこまでも追う。
おそらく、命尽きるまで、な。
獲物の血や泥が全身にこびりつき、もうすっかり、元が透明だったなどとは思えない、それこそ普通の鵺竜と変わらない見た目になった夷嶽がガツガツと獲物を食している姿は、本当にただの動物の一匹に過ぎないと実感するな。
たぶん、人間の気配が近くになければこういうものなんだろう。
凶がいた<グンタイ竜>の群れは、恐ろしい繁殖力と食欲で生態系を破壊しかねなかったし、蛟は自身が生物として破綻した無理な構造をしていたことで短命だったであろう上にやはり異常な凶暴さを見せていたが、思えば、嶽は、鵺竜の一種として見れば、生態そのものはそんなに異常じゃなかった気がする。銃砲の存在を知っているようなそぶりを見せたり電磁波によって電磁加速質量砲の発射タイミングを完璧に捉えてみせたりというのはさすがに異様でも、それ以外の点では、な。
その嶽に非常に近い生物として生を受けた夷嶽も、<この台地の上に紛れ込んだ鵺竜>と考えるなら、穏当に生きることもできるんじゃないだろうか。
もしかすると、麓に下りればそれこそ近い種のパートナーでも見付けて、子を成すことだってできるかもしれない。
ただ、残念ながら、今の俺達には、千メートル級の断崖絶壁を安全に麓まで夷嶽を移送できる方法がないんだ。すまん。
それで言うと、牙斬が<超ルプシアン>だったことは、不幸中の幸いだったかもしれないな。
なお、牙斬の方ももちろん監視しているが、どうやら、右腕も回復してきているらしい。杭として射出した尺骨が再生してきているのかもしれないな。
一度の戦闘では一発しか使えないのだとしても、そうやって再生するならやはり脅威ではある。
生物として考えたら無茶苦茶な能力だが。
うん、そんな牙斬と比べれば夷嶽はまっとうな<動物>だよ。<電磁パルス攻撃>だって、機械が相手じゃなきゃ使いどころもあまりないだろうし。
食事を終えた夷嶽は、頭を上げて、周囲を見回した後、物思いにふけるかのように遠くを見詰めていた。
それからおもむろに、二百メートルほど離れたところで待機していた<十七号機><二十三号機><二十五号機>目掛けてのそりと歩き出す。木や草の陰に隠れていたから視覚的には見えていないはずだが、やはり、ロボットである<十七号機><二十三号機><二十五号機>らが出す僅かな電磁波を探知しているんだろう。そして、どこまでもどこまでも追う。
おそらく、命尽きるまで、な。
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