上 下
1,219 / 2,607
第三世代

モニカとハートマン編 杭

しおりを挟む
本当に、『これまでの苦労はなんだったんだ?』ってくらいにあっさりとエレクシアが牙斬がざんを取り押さえてしまって、俺は気が抜けてしまっていた。

「改めて人間(地球人)の技術力はとんでもないんだな……」

とも呟いてしまう。

そうだ。人間(地球人)は、光の速さでも何万年も掛かる距離さえ数時間で飛び越え、たった一発のミサイルで惑星すら破壊するほどの技術力を得た。それこそが人間(地球人)の<力>だ。個々の肉体の脆弱さなど、技術の前には実に瑣末な問題なんだ。

牙斬がざんが生物としてどれほど桁外れでも、数万年の距離を飛び越えることも、一撃で惑星を破壊することも、できはしない。要人警護仕様のメイトギアにさえ遠く及ばないドライツェン相手にいい勝負をするのが精一杯なんだからな。

まあ、サーモバリック爆弾を凌いで見せたのには、さすがに背筋が凍ったが。

それでも、これが限界だろう。

久利生くりうは軍人らしくまだ気を抜いていないものの、俺もシモーヌも完全に安堵していた。終わった気になっていた。なにしろ、エレクシアが腰に着けたポシェットから麻酔のアンプルを取り出し、力尽くで牙斬がざんの口に捻じ込もうとしてたからな。

そうだ。これで終わりなんだ。牙斬がざんがいくらもがいても、もう何もできない。がくはあくまであの巨体があればこそ、エレクシアとメイフェアとイレーネの猛攻に耐えることができただけだ。

なのにその時、

「っ!?」

エレクシアが飛び退いた。飛び退こうとした。

ガキャッッ!!

という嫌な音と共に。

「え……?」

「はい……?」

俺とシモーヌは、ドローンが捉えた映像の中で何が起こったのかをすぐに理解できなかったが、あかりは察したようだった。

牙斬がざん…っ! なんてヤツ……!」

唸るようなあかりの言葉でようやく、牙斬がざんが何かをしたんだと俺も理解することができた。そして、飛び退いて身構えたエレクシアの姿に、強烈な違和感。

いや、彼女の<左腕>に、か。

エレクシアの左腕の形がおかしいんだ。彼女の左腕から何か、鋭いものが生えていて。

……違う…! 何かが彼女の左腕を貫いているんだと、俺はようやく理解した。そこに、

牙斬がざんの攻撃です。左前腕部を破損。機能しません」

エレクシアからの報告。とても冷静で冷淡で、いつもの彼女とまったく変わらない、けれど、これまで聞いたことのないそれが俺の頭に染み込んでくるまでに、たっぷり数秒の時間を要しただろう。そんな俺に、エレクシアが補足説明を。

牙斬がざんが、自身が発生する強力な電磁力によって、右前腕部の<尺骨>をパイルとして射出したものと推定」

……は? はあ……!?

右前腕部の<尺骨>を…? 

パイルとして射出した……?

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

人間不信の異世界転移者

遊暮
ファンタジー
「俺には……友情も愛情も信じられないんだよ」  両親を殺害した少年は翌日、クラスメイト達と共に異世界へ召喚される。 一人抜け出した少年は、どこか壊れた少女達を仲間に加えながら世界を巡っていく。 異世界で一人の狂人は何を求め、何を成すのか。 それはたとえ、神であろうと分からない―― *感想、アドバイス等大歓迎! *12/26 プロローグを改稿しました 基本一人称 文字数一話あたり約2000~5000文字 ステータス、スキル制 現在は不定期更新です

幼馴染は何故か俺の顔を隠したがる

れおん
恋愛
世間一般に陰キャと呼ばれる主人公、齋藤晴翔こと高校2年生。幼馴染の西城香織とは十数年来の付き合いである。 そんな幼馴染は、昔から俺の顔をやたらと隠したがる。髪の毛は基本伸ばしたままにされ、四六時中一緒に居るせいで、友達もろくに居なかった。 一夫多妻が許されるこの世界で、徐々に晴翔の魅力に気づき始める周囲と、なんとか隠し通そうとする幼馴染の攻防が続いていく。

こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十
ファンタジー
厚さ数キロの氷に閉ざされた自由惑星<ハイシャイン>。その氷の下に僅かに残された人間の世界に生まれ育った浅葱(あさぎ)は、十三歳を迎え一人前の砕氷(さいひ)となるべく先人達が永久凍土を掘り進めた氷窟に挑む。そこで彼女が事故のようにして巡り会ったのは、氷点下四十度の中で眠り続ける、女性の姿をした何者かであった。浅葱はそれを<ねむりひめ>と名付け、村へと連れ帰ろうとするのだが……。       筆者より。 なろうで連載していた「凍結惑星 ~こおりのほしのねむりひめ~」の、表現をマイルドにした<ほのぼのばーじょん>です。「凍結惑星 ~こおりのほしのねむりひめ~」を読むときの感じで読もうとするとずっこけるようなものしたいと思います。科学的な考証とかにはなるべく拘りたくない。と、思います(努力します)。 ちなみに筆者自身は登場人物達を三頭身くらいのデフォルメキャラという感じで脳内再生しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...