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第三世代

アリニドラニ村編 価値観

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『優れてるものが劣ってるものを見下して蔑んでいい』

そんな戯事を肯定していたら、地球人なんてここではおそらく蔑まれる側だろう。

ひかりあかりも、俺と同等以上の知能がある。その上で身体能力では俺は彼女らの足元にも及ばない。

地球人である俺が<朋群ほうむ人>に対して勝ってる部分なんて、ロクにないんだ。

もちろん俺よりも優秀な地球人だって数限りなくいるが、それだってこれからの朋群ほうむ人にもものすごく優秀なのが出てくる可能性は十分にある。

『間違いなく地球人の方が優秀だ』

とする根拠はまったくない。

その現実を見ればこそ、地球人の側が蔑まれることになる可能性を考慮すればこそ、

『優れてるものが劣ってるものを見下して蔑んでいい』

という考え方は、推奨するべきじゃないと俺は思う。何より、地球人自身の首を絞めるだろうし。

『そんなこと言っても、優秀な者が劣っている者を見下し蔑むのは本能のようなものだ。野生動物だって優れている者がいい思いをするじゃないか』

みたいに言うのもいるかもしれないが、俺の実感は違うな。

どんなに<優れた者>であっても、死ぬ時はあっさり死ぬ。それこそ本当にあっさりと。

優れていれば生き延びられる可能性が僅かばかり高まるかもしれないものの、決して<絶対>ではない。

この、無慈悲なまでに当たり前の現実を目の当たりにしてきた以上、

『何をもって優れているとするか?』

なんて話は、

<ぼくがかんがえたさいきょうのてんさい>

みたいな、子供が考えることだと俺は思う。

子供が考えている分にはいいが、大人が、本気で、

『自分は優秀だから周りを見下していい』

的なことを考えているとしたら、あんまりにも情けない気がするんだよ。

社会というのは、いろいろな者が集まっているからこそ成立している。たった一人の価値観で出来上がっているわけでもないし、地球の歴史を繙いても、どんな賢人でも英雄でも独裁者でも、たった一つの決まった価値観ですべてが成立している社会なんて誰一人成し遂げていないんだ。

そう、歴史に名高い者ですら成し遂げられなかったことを、俺が成し遂げられるわけがない。

たった一つの<優秀さ>を決めて、そこに至った者がそこに至らなかった者を見下して蔑んでいいなんていう考え方が成立する社会なんて、俺には作れないよ。

だったら、ただ単純に、自分以外の誰かのことを<自分とは違う存在>として敬うことをよしとする社会を目指したいと思う。

誰かに『劣ってる』と見下されて蔑まれるとか、そんなこと、楽しくないだろう?

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