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第三世代

アリニドラニ村編 斗真

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新暦〇〇三十二年七月十八日。



斗真とうまは本当に頭が良かった。正直、五歳とか六歳とかは過小評価だったかもしれない。

ワイバーン一型&二型で輸送した荷物は主に<ラボ>を建設するために必要な資材だったんだが、村の外の滑走路で回収したそれを村の倉庫に運び込む作業も、すぐにできるようになった。

自分が何をやっているのか、完全に分かっている者の動きだ。

すごいな。

本当にすごい。

はっきり言ってほまれたもつでさえここまでじゃなかった。さすがにひかりあかりには及ばなくても、じゅんになら並べるんじゃないか?

もしかすると、特別な才能の持ち主かもしれない。

マンティアンの龍然りゅうぜんは身体能力的に<とんでもスペック>の持ち主だったが、斗真とうまは頭脳の方でとんでもスペックの持ち主なのかもな。

とは言え、例外的な存在だからこれまで俺達の周りでは見られなかっただけで、実は台地の上全部を調べられれば結構な数がいたりする可能性も考えられる。

地球人における<天才>と呼ばれる者達だって、集めれば結構な人数になるはずだ。

こういうのも<朋群ほうむ人の社会>には影響を与えるか?

しかしこうなるとますます<人間>と<人間以外>の区別が難しくなるな。ひょっとすると本当に、<人間と獣人>という感じになるかもしれない。

人間と獣人が共存する世界か。

フィクションにはよく見られるものだろうが、まさかそれが現実になるとは。

ただ、フィクションの場合は、人間と獣人との間で軋轢が生じてるような描写も多いのか。

自分がその当事者になるかもと思うと、さすがにいろいろ考えさせられてしまう。

『みんな仲良く平等に』

なんて、俺自身がまったくピンと来ない<標語>を掲げるつもりはないが、具体的で実効性のある共存のためのアイデアは振り絞っていきたいな。

どうにも地球人には、

『優れた者は劣った者を見下し蔑んでいい』

と考えがちという悪癖があった。

だがこれは、冷静に考えてみればおかしなことだ。

『果たして何をもって優れてるとするか?』

というそもそも論の視点が欠けてるんだ。

そして、

『上には上がいる』

という現実的な視点も欠けている。

ここでは地球人である俺なんて本当に脆弱で貧相な雑魚そのものだ。確かに知能だけなら少しはアレかもしれなくても、それすら言うほど役には立ってない気もする。なにより、知識量も思考の速度もAIには遠く及ばないんだ。

と言うことは、『優れてるものが劣ってるものを見下して蔑んでいい』という考えに基づくなら、俺はむしろ見下され蔑まれる側だろう。

俺だけじゃなく、多くの地球人が、ここじゃ蔑まれる側ってことになるだろうな。

それでいいのか? 『優れてるものが劣ってるものを見下して蔑んでいい』なんて考えを肯定するなら、そういうことにもなりかねないぞ。

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