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新世代

來編 三つ巴

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『イレーネ! 緊急対応!! あの女性を救出!!』

久利生くりうが命じたが、実はそれではイレーネは動かない。イレーネにとって今の久利生くりうは、

『人間じゃない』

からだ。あらかじめ俺が久利生くりうの指示に従うようには命令しておいたものの、それはあくまで平時の話。緊急事態はまた別だ。

「イレーネ! きたるを助けろ!!」

久利生くりうに一瞬(たぶん、〇.五秒足らず)遅れて俺が出した命令に、

「了解いたしました」

と応じ、イレーネはカーゴスペースのドアを開けて緊急対応モードに移行。ドンッ!という音と共に宙を舞い、二十メートル以上ある対岸近くまで跳んだ。

そして正確にきたるのすぐ近くに着水。きたるを抱きかかえて一旦水没。河底の硬い部分(沈んでいた岩か?)を捉えてそこを蹴り、まるで水中発射式のミサイルのように宙へと舞い上がった。

さりとて、さすがにきたるも抱きかかえてのそれだと、ローバーがある側の岸までは跳べない。

が、十メートルくらいは跳び、不定形生物との距離を稼いで、そこからは全力で泳いで岸へと向かった。

きたるも自分で泳ぐ。と言うか、水中では実は今のイレーネよりもワニ人間クロコディアのほうが早かったりもする。イレーネの右足は義足だから、本来の性能を発揮できないんだ。

なのに……

きたるがやや遅れてる。どうやら本調子じゃないのか。そのせいでいつもなら余裕で振り切れる不定形生物の接近を許したのかもしれない。

一方、久利生くりう達の方も、ローバーを河に進め、イレーネときたるを迎える。

ビアンカの絶妙な運転で、滑るように方向転換、あかりがカーゴルームの窓を開けて、久利生くりうと一緒にきたるを収容。イレーネはローバーに掴まらせた状態で全速離脱。岸に戻り、そのまま密林へと退避した。

その間にも、

きたる様が発熱しています。何らかの疾患が想定される事態です」

イレーネがローバーのカーゴスペースのドアを開けて乗り込みつつ報告してきた。

発熱か。やはり、体調が悪かったんだな。

「悪い! 久利生くりう、今日のところはコーネリアス号行きは中止させてくれ! きたるを保護したい!」

俺が告げると、久利生くりうも、

「もちろんそれで構わない。コーネリアス号は逃げないからな」

と応えてくれた。

が、この時、イレーネのカメラに映し出された久利生くりうの姿は、ローバーのカーゴスペースで、しなだれかかるように抱きついているきたるを抱き締めているというものだった。

それを見たあかりが、

「あれ? ひょっとしてきたる、発情してる?」

は…? はいぃ……っ?

きたるについて話をするつもりがここまで蚊帳の外だと思ってたら、まさかこの展開!?

そう。きたるのやつ、久利生くりうを見た瞬間に一目惚れしてしまったらしいんだ。

つまり、久利生くりうを巡る、ビアンカ、あかりきたるの<三つ巴の女の戦い>が始まってしまったということだな。

な、なんじゃそりゃ~っ!!?

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