上 下
750 / 2,588
新世代

翔編 区切り

しおりを挟む
何と言うか、ここまでのシモーヌとの関係のような状態が長く続くと、逆に改まって結婚という形にはなりにくいという話は俺も聞いたことがあった。

だからなんとなくずっとこのままいくんだろうなと思ってた。

なのに、ここにきて急に、

『そろそろ、私達もはっきりさせていいんじゃないですか?』

とか言われても……

……ひょっとして俺って、女性関係ではただの朴念仁なのか……?

ひそか達に対してもああだこうだと理屈をこねくり回して態度をはっきりさせてこなかったしな。

ああ、それでフられたのか。

人間社会にいた頃にも何人かの女性と付き合ったことはあったものの、いつも最後は俺がフられる形で終わってた。

当事は、妹のこともあって妹のことばかり気にしてる俺に愛想を尽かしたんだろうなと思ってたが、もしかするとそれ以前の問題だったか。

基本的に女性を相手にすると優柔不断なんだ、俺。

あいたたたた……! まさか、いまさらそんなことに気付かされるとは……

「迷惑ですか……?」

シモーヌに問い掛けられて、

「いや…そういうわけじゃ……」

などとはっきり言葉が出てこない。

と、その瞬間、

パーン!

って感じの音と共に、頭に衝撃が。その上、

「しっかりしなさい! パパ!! 男でしょ!?」

と怒られた。

あかりだった。あかりが、いつの間に作ったのか<ハリセン>を手にしててそれで俺の頭をはたいたんだ。

『男でしょ!?』

なんて、人間社会でヘタに口にしたら今時<ジェンダーハラスメント>ってことでいろいろ言われることもあるが、ここじゃそれもないからなあ。

でも、ま、シモーヌがそれを望んでて、娘であるあかりもOKしてるなら、俺が断る理由はないのか。

「そうだな。しっかりしなきゃな」

俺も、シモーヌのことは確かに好きだ。素晴らしい女性だと思う。

というわけで、

「じゃあ、改めてよろしくお願いします」

と頭を下げさせてもらう。するとシモーヌも、

「こちらこそ、よろしくお願いします」

と返してくれた。









新暦〇〇三〇年十二月八日。



そんなこんなで、俺とシモーヌは改めて<夫婦>ということになった。

「おめでとうございます!」

ビアンカも嬉しそうに手を叩いて祝福してくれた。

ひかりも、

「やっと年貢を納めたんだね」

とかなんとか。彼女の性格もあって何も言わなかったが、内心ではヤキモキしてたらしい。

まあ、『結婚した』とは言っても、婚姻届を出す役所もないここじゃ当人同士の気持ちだけの問題なので、家族だけの質素な<結婚式>を執り行っただけだった。

誓いの言葉もない、指輪の交換すらない、本当に形だけの儀式だ。

それでも、気持ちの上で区切りをつけるには丁度いいのか。



が、何度も言うがいまさら<夫婦>と言われても、正直、照れくさいぞ!?

なのに……

「諦めてください。逃げ場はありませんよ」

光莉ひかり号のキャビンの中で二人きりになって、俺は、シモーヌに唇を奪われていたのだった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

精霊のジレンマ

さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。 そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。 自分の存在とは何なんだ? 主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。 小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...