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新世代

翔編 チャンス

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新暦〇〇三〇年十一月二十八日。



思いがけずすいについてじっくり触れることになったが、こういう機会もあっていいだろう。

しかし、清良せいらにとってはなかなか大変な恋路じゃないかな。

ただ、彼女に振り向こうとしないすいの姿を見てると、少々、俺自身、いたたまれない気分にもなってくる。

この<群れ>が出来始めた頃を思い出して……

あの頃の俺は、ひそか達が想いを寄せてくれているのを気付きながらそれに向き合おうとしてこなかった。彼女達の気持ちを無視してきたんだ。

我ながら最低だと思うよ。

確かに人間社会じゃ、いや、厳密にはそれが認められてる地域やコミュニティもあるにはあるそうなんだが、少なくとも俺が生まれ育ったところでは、一度に複数の女性と付き合うのは顰蹙モノだった。そういうのがバレて社会的に袋叩きにされた芸能人とかも結構いる。だからまあ、そういうのが頭の隅に引っかかってて腰が引けてたというのもあるんだと思う。

なにより、エレクシアに嫌われるんじゃないかと思ってたんだよ。たぶん。

とは言え、ロボットであるエレクシアにとっては人間の色恋沙汰などそもそも大した問題じゃなく、しかもここには今なおその手の倫理観は確立されてない。むしろ俺達人間(地球人)の方がここでは異端だし、人間(地球人)の価値観や恋愛感や結婚観もまったく余計なお世話なんだ。

彼女達は俺を群れのボスとして認めてその寵愛を受けようとしてたんだから、それに応えないのは逆に失礼だったんだよな。

まあ、すいの場合は(とっくにパートナーがいても何もおかしくない年齢ではあるが)そういう気持ちになれてないってだけなんだろうな。

が、やっぱりこんだけ気持ちを寄せてくれてるんだし、ちょっとくらいは振り向いてあげてもいいんじゃないかなと思わなくもない。

父親としても、せっかくのチャンスをものにしてほしいなあと思ってしまったりもするんだよ。

でもなあ、変に口出しするのも違うだろうしなあ。

などとヤキモキすること数週間。清良せいらは根気強くアプローチを続けてくれてて……

「お…? すい、やっと清良せいらの気持ちに気付いてくれたのか……!?」

思わず声を上げた俺の視線の先には、清良せいらがすぐ近くにいても追い払おうとしないすいの姿だった。

だからといって別にイチャイチャするでもないんだが、少なくとも邪険にはしないようになったんだったら、まあ、大きな前進なんじゃないかな。

ここからすぐにことが進むわけじゃないにせよ、実際、これまでにもただ雌と一緒にいるだけなら何度かあったがそこから先には進まなかったものの、でも、切っ掛けにはなると思う。

その予測どおり、それからすい清良せいらは一緒にいることが多くなった。微妙な距離感はありつつも、よそよそしさは残しつつも、慎重に相手を見極めようとしてるのかもしれないし、うん、悪くないんじゃないかな。

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