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幸せ

生真面目な光(らしいと言えばらしいのか)

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ボノボ人間パパニアンの身体能力と人間の知能を併せ持つひかりは、俺なんかじゃ足元にも及ばないくらいに強い。銃やスタングレネードなどの武器も巧みに使いこなし、十分に武装さえしてればカマキリ人間マンティアンすら一人で撃退してみせるだろう。

反面、それが故に油断があったのでは? と言われればそうかもしれない。

俺とシモーヌが同じ状況になればローバーの中に避難する。しかしひかりの場合は、なまじ強いだけに『たぶん大丈夫だろう』ということで『その辺りの判断は彼女に任せる』ということにしてあったんだ。それが裏目に出た。

また、じゅんにしてみれば自分の好きな雌を守る為に必死になるのは当然のことで、それで無茶をしてしまうことがあるのも全く不自然じゃないだろう。

本人的にはいいところを見せられる目算もあったんだろうし。

確かに一対一ならボノボ人間パパニアンにだって勝機はある。だからちょっと自分を過信し過ぎただけで。

その辺りのことも俺が想定しておくべきことだったんだ。

「この群れのボスは俺だ。最終的な責任は俺にある」

真っ直ぐに見詰めてそう言う俺の前で、ひかりは唇を噛みしめてうなだれていた。

「お姉ちゃん……」

あかりが心配そうにひかりを見る。

ひかりにしてみれば、ここまでの失敗は初めてだっただろう。もちろん彼女だって完璧超人ってわけじゃないからそれなりにいろいろ失敗はあっても、家族が重傷を負うようなものはこれまでなかったんだ。

こんなに落ち込んでるひかりを見るのは、俺も初めてのような気がする。

俺としても、先にも言った通りことさら責めるつもりもない。これからどうすればいいかは、同じ失敗を繰り返さない為には何が必要かは、彼女自身が気付いてくれるだろう。その為に何か助力が必要であれば、もちろん力になる。

だが、この時、ひかりが考えていたのはそれだけじゃなかったんだ。

彼女が落ち着くまでと思ってその場でゆっくりとお茶をいただいてた俺に、

「お父さん…!」

と不意に声が掛けられた。

「ん?」

意識を向けた俺の視線の先にいたのは、何かを決心したかのような強い眼差しで真っ直ぐに俺を見詰めているひかりだった。

そして彼女は言った。

「私、じゅんの子供を産む…!」

「お……おう。そうか……」

いやまあ、ひかりも、身体的にも実年齢ももう立派な<大人>だから、その辺りは自分で決めればいい。だが、それをわざわざこうやって宣言するあたりが、生真面目なひかりらしいと言えばらしいのか。

じゅんももう、かなり人間っぽくなった。

「お前がそう決めたのなら、好きにすればいい。俺達は力になる。子育ては任せてくれ」

「そっか~! お姉ちゃんもやっと覚悟を決めたか~。正直、いつになるのかって思ってたんだよね」

饒舌になってたひかりとは逆に殆ど口をきかなかったあかりが、ホッとしたみたいに急に明るくなったのだった。

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