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幸せ
來の想い(あるのかどうかは不明だが)
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新暦〇〇二三年九月十八日。
刃や鷹のことばかり触れてるから力や悠のことは忘れてるんじゃないかと思われるかもしれないが、もちろん忘れてるわけじゃない。ただ、刃や鷹は俺の<嫁>だったからより強く思い出されるだけだ。
力と悠の子である來と晃はそれぞれ元気にしているし、來の息子である当も既に立派に大きくなった。
ちなみに、当の父親は所在が確認できていない。來が当を妊娠していた時点でもうそれらしきワニ人間の雄の姿は確認できなかった。早々に他の雌のところに行ったのか、それとも死別したのかは分かっていない。気付いた時には來は妊娠していたというだけだ。
父親が他の雌のところに行ってしまうこと自体は、ワニ人間の習性として別に珍しいことじゃないからそれは構わない。力と悠のように生涯同じ相手と添い遂げる事例の方が少数派だということも分かってきている。
それについて『節操がない』とか言ってしまうのはおそらく人間の勝手な感覚だろう。ワニ人間達にはきっと悪意なんて微塵もないし、良くないことだとも思っていないだろうから。
だからそれはいいんだ。
なんてことを、密とイチャイチャしながら釣りをしつつ考えていたら、エレクシアが、
「來が来ました」
と告げてきた。
「ん…? 來が?」
ついそう訊き返してしまったが、來が来るのも割とよくあることだった。まさか里帰りという訳じゃないだろうが、かつての自分の<家>でもあった池に来て、そこに繁殖している魚を貪っていく。
だから単純に、彼女にとっては他のワニ人間に邪魔されずにたらふく食える<いい餌場>ということなんだろうな。
ただ、ここの魚は河にいるのと比べるといささか小型で、腹いっぱい食べるには何匹も捕まえないといけないのが面倒臭いから、河で十分に餌が採れなかった時にそれを補う為にくる感じだろうか。
当が小さかった時には餌の獲り方を教えるのにも絶好の場所だったのかもしれない。
こういう時、人間はついつい、
『池の底で眠る両親を偲んで会いに来てるのかもしれない』
とか思ってしまいがちだが、ワニ人間には、一部には死んだ仲間を悼むメンタリティを持つことを匂わせる行動も見られるものの(悠の基になったワニ人間の雌の死を力が悲しんでいたと思われる様子がそれ)、<墓>といったものを理解していると裏付けられる証拠は何一つ見つかっていない。
それでも、俺個人としては、來は両親と一緒に暮らしたここを懐かしんで、両親に会いに来てるのもあるんじゃないかと思ってしまう部分も無きにしも非ずなんだよな。
刃や鷹のことばかり触れてるから力や悠のことは忘れてるんじゃないかと思われるかもしれないが、もちろん忘れてるわけじゃない。ただ、刃や鷹は俺の<嫁>だったからより強く思い出されるだけだ。
力と悠の子である來と晃はそれぞれ元気にしているし、來の息子である当も既に立派に大きくなった。
ちなみに、当の父親は所在が確認できていない。來が当を妊娠していた時点でもうそれらしきワニ人間の雄の姿は確認できなかった。早々に他の雌のところに行ったのか、それとも死別したのかは分かっていない。気付いた時には來は妊娠していたというだけだ。
父親が他の雌のところに行ってしまうこと自体は、ワニ人間の習性として別に珍しいことじゃないからそれは構わない。力と悠のように生涯同じ相手と添い遂げる事例の方が少数派だということも分かってきている。
それについて『節操がない』とか言ってしまうのはおそらく人間の勝手な感覚だろう。ワニ人間達にはきっと悪意なんて微塵もないし、良くないことだとも思っていないだろうから。
だからそれはいいんだ。
なんてことを、密とイチャイチャしながら釣りをしつつ考えていたら、エレクシアが、
「來が来ました」
と告げてきた。
「ん…? 來が?」
ついそう訊き返してしまったが、來が来るのも割とよくあることだった。まさか里帰りという訳じゃないだろうが、かつての自分の<家>でもあった池に来て、そこに繁殖している魚を貪っていく。
だから単純に、彼女にとっては他のワニ人間に邪魔されずにたらふく食える<いい餌場>ということなんだろうな。
ただ、ここの魚は河にいるのと比べるといささか小型で、腹いっぱい食べるには何匹も捕まえないといけないのが面倒臭いから、河で十分に餌が採れなかった時にそれを補う為にくる感じだろうか。
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こういう時、人間はついつい、
『池の底で眠る両親を偲んで会いに来てるのかもしれない』
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それでも、俺個人としては、來は両親と一緒に暮らしたここを懐かしんで、両親に会いに来てるのもあるんじゃないかと思ってしまう部分も無きにしも非ずなんだよな。
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