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幸せ

親バカってのは(治そうとしても)

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メイフェアについてはたぶん、余計な手出しはしないでいてくれるとこれで確信できた。残る問題は、ボスの座をめぐる争いか。ほまれは今回静観する構えだとしても、他の雄が黙ってない感じだし。

「改めて、現時点での様子はどうだ?」

「はい、今現在も緊張状態が続いています。特に、らいが腹に据えかねてる感じですね」

「無理もない。機会を窺ってたところに『トンビに油揚げを攫われた』状態だからな。冷静に考えても納得いかなくて当然だ。

となると、らいを中心に事態がさらに動く可能性があるか」

「ですね」

などと俺とメイフェアがやり取りしているところに、シモーヌも加わる。

「私としては、せっかくの機会ですから、詳細なデータを得たいところです」

と、さすが学者という感じだ。

ボスが亡くなってるというのに薄情かもしれないが、正直、

『息子が勤めてる会社の社長が亡くなった』

というような話なわけで、それで家族が亡くなった時のように落ち込む人間の方が少数派じゃないかな。薄情そうには思えても、いつもいつも大切な人を亡くした時のそれと同じ苦痛を感じていたら精神がもたないし、この辺りは『他人事』として切り離せなきゃむしろダメなんだろう。

さりとて、ボスが亡くなったことについては俺なりに心の中では悼みたいとは思うが。ほまれが世話になったのも事実なわけで。

『ありがとう。今までご苦労様』

素直にそう思える。こうしてまた、命が自然の循環の中へと還っていく訳だ。

そうやってボスの死を悼みながらも、状況の推移を慎重に見守る。






新暦〇〇二二年九月二十七日。



今日は本来なら俺とシモーヌとエレクシアのチームAアルファが調査に出るところだったが、さすがに心配なので待機だ。

今現在、暫定ボスと他の雄達との間で睨み合いが続いている状態だな。予断を許さないという感じか。

特に、らいにしてみれば、『トンビに油揚げ』であるのと同時に、おそらく願ってもない機会でもあるだろう。ここで前ボスの仇を取ることができればそれこそ誰に文句も言わせることなくボスの座に就くことができるだろうし。

それを、ほまれはどう見るかな。

という意味での興味は正直言ってある。今後、ほまれ自身がボスの座を本格的に目指す時の試金石にもなるかもしれない。あいつが群れの頂点に立てる器かどうかという意味も含めて。

まあ、親心としては今でも十分、あいつにはその器があるとは思ってるが。

ただ、親が評価してるほどは世間は我が子を評価してないってのもよくある話だろうし、この辺りは冷静に客観的に見ることを心掛けなきゃいけないだろう。

とは言え、親バカってのは、治そうとして治るものでもないからな。

できるのは、下手にちょっかいを出さないよう自制することくらいか。

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