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幸せ
おい!(なんでここにいる!?)
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新暦〇〇二〇年七月二十三日。
で、蛮の縄張りを外して調査することにして、確実に他のヒト蜘蛛の縄張りだった地域に行ったはずなのに、
「蛮です。こちらに接近中」
「…え?」
エレクシアに告げられて、声を上げてしまう。
「バカな!? なんでここにいる!?」
そう言いつつも方向転換。遠ざかろうと試みる。なのに……
蛮だ。散々見てたからか、エレクシアに確認しなくても見分けがつくようになってしまったあいつが、ローバーの前に立ち塞がるように飛び出してきた。
って、ここは完全に他のヒト蜘蛛の縄張りだぞ!? 何やってんだお前!?
と思ったら、案の定、俺達が見てる前で、縄張りを荒らされた形になった方のヒト蜘蛛が現れて、蛮と争い始めてしまった。
「……何のつもりだ、あいつ……」
「困ったものですね…」
いくら俺達がこっち側に来たことに気付いたからって他のヒト蜘蛛の縄張りにまで入り込むとか、自分のやってることが分かってないだろう? そんなことをしてると命にも関わるぞ。
だが、蛮はヒト蜘蛛としては知能も高く、しかも散々エレクシアと戦ってきたからか、
「強いな……」
「ええ、強いですね…」
と俺達が呟いてしまうくらい、侵入者を撃退しにきた筈のヒト蜘蛛を圧倒していた。
しかし、このままじゃここの縄張りを持ってた奴の方が負けてしまう。仕方ないので、
「エレクシア、蛮を追い払え」
そう命令し、対処させた。普通の縄張りの奪い合いなら俺達が干渉するべきじゃないとも思うが、今回のは明らかに違うからな。
するとようやく、エレクシアに空中高く蹴り上げられて失神した蛮を、そのまま担いでもらって、あいつの縄張りにまで運んでもらった。
で、あいつの縄張りについた時にちょうど目を覚ましてまた暴れて、やっぱりエレクシアにぶっ飛ばされる。
ホントに懲りない奴だな……
ただ、地面に突っ伏した蛮が、人間のようにも見える部分の顔が悔しそうに歪み、涙さえこぼしてエレクシアを睨み付けていたその姿が何だか憐れにも思えて、
「分かった……分かったよ。俺達が悪かった。もう二度とお前の視界に入らないようにする」
と、ローバーの中からだがそう言って、俺は決断した。
「蛮の縄張りを中心に、半径十五キロの地区は調査対象から外そう。あいつの視界に入らないようにしてやろう」
あいつは、俺達人間のように物事を客観的に考えるということまではできない。思考の全てが主観的なんだ。自分が世界の中心で、正しいんだ。そういう考え方しかできないし、あいつらの脳の構造そのものがそうなってるんだ。それを人間のように『客観的に物事を見ろ』というのがそもそも押し付けなんだ。
ここは俺達の方が折れるべきなんだろうな。でなければ、蛮を排除しなけりゃならなくなる。
別にあいつは、河の向こうまでやってきて襲撃してくる訳でもないのに。俺の家族が危険に曝されてる訳でもないのに。
それであいつを排除するなら、さすがにこっちが身勝手というものだろう。
で、蛮の縄張りを外して調査することにして、確実に他のヒト蜘蛛の縄張りだった地域に行ったはずなのに、
「蛮です。こちらに接近中」
「…え?」
エレクシアに告げられて、声を上げてしまう。
「バカな!? なんでここにいる!?」
そう言いつつも方向転換。遠ざかろうと試みる。なのに……
蛮だ。散々見てたからか、エレクシアに確認しなくても見分けがつくようになってしまったあいつが、ローバーの前に立ち塞がるように飛び出してきた。
って、ここは完全に他のヒト蜘蛛の縄張りだぞ!? 何やってんだお前!?
と思ったら、案の定、俺達が見てる前で、縄張りを荒らされた形になった方のヒト蜘蛛が現れて、蛮と争い始めてしまった。
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「困ったものですね…」
いくら俺達がこっち側に来たことに気付いたからって他のヒト蜘蛛の縄張りにまで入り込むとか、自分のやってることが分かってないだろう? そんなことをしてると命にも関わるぞ。
だが、蛮はヒト蜘蛛としては知能も高く、しかも散々エレクシアと戦ってきたからか、
「強いな……」
「ええ、強いですね…」
と俺達が呟いてしまうくらい、侵入者を撃退しにきた筈のヒト蜘蛛を圧倒していた。
しかし、このままじゃここの縄張りを持ってた奴の方が負けてしまう。仕方ないので、
「エレクシア、蛮を追い払え」
そう命令し、対処させた。普通の縄張りの奪い合いなら俺達が干渉するべきじゃないとも思うが、今回のは明らかに違うからな。
するとようやく、エレクシアに空中高く蹴り上げられて失神した蛮を、そのまま担いでもらって、あいつの縄張りにまで運んでもらった。
で、あいつの縄張りについた時にちょうど目を覚ましてまた暴れて、やっぱりエレクシアにぶっ飛ばされる。
ホントに懲りない奴だな……
ただ、地面に突っ伏した蛮が、人間のようにも見える部分の顔が悔しそうに歪み、涙さえこぼしてエレクシアを睨み付けていたその姿が何だか憐れにも思えて、
「分かった……分かったよ。俺達が悪かった。もう二度とお前の視界に入らないようにする」
と、ローバーの中からだがそう言って、俺は決断した。
「蛮の縄張りを中心に、半径十五キロの地区は調査対象から外そう。あいつの視界に入らないようにしてやろう」
あいつは、俺達人間のように物事を客観的に考えるということまではできない。思考の全てが主観的なんだ。自分が世界の中心で、正しいんだ。そういう考え方しかできないし、あいつらの脳の構造そのものがそうなってるんだ。それを人間のように『客観的に物事を見ろ』というのがそもそも押し付けなんだ。
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