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シモーヌ

走と凱(しっかり生きてくれればいい)

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ローバーがゆっくりと動き出しても、そうかいはただそれを見送るだけで、追いかけようとする動きさえ見せなかった。もしここで追いかけようとするなら止まって乗せてもいいと思ってたんだが、どうやらそれは俺の方が子離れできてなかっただけのようだ。

あいつらはもう、自分の生きていく場所を選んだんだ。あとはしっかり生きてくれればいいと願うだけだ。

そして俺は、そうが好きになったライオン人間ライオンの雌を、けいと名付けた。

「仲間を大切にしろよ……」



「本当にあれで良かったんですか…?」

俺達のところに戻ってきてシモーヌが改めて俺に問い掛けてきた。彼女にしてみればやっぱりすぐには納得できないことだろう。それは分かる。だから彼女がそう思うことを批判するつもりもない。

「あいつらが決めたことだからな……」

そう応えたのは、シモーヌに対してというよりは俺自身に言い聞かせるものだったと思う。不安も心配ももちろんある。これであいつらにもしものことがあれば俺は一生、後悔するだろう。でも、こういうものなんだ。ここではな。

実際、さっきも言った通り、そうかいも何だかんだとよろしくやっていた。当然か、あいつらにとってはそれが普通なんだから。しんもそうだし、俺の<孫>が生まれるのもそう遠いことじゃなさそうだなあ。





新暦〇〇〇七年十一月十六日。



そうくん…かいくん……」

帰ってから一眠りした後、コーネリアス号から持ち帰った電磁調理器コンロや洗濯機をエレクシアの力を借りて新しい家に据え付け、私物もウォークインクローゼットに仕舞いつつ、シモーヌは二人の名前を呟いた。自分が一緒に行ったからこんなことになったのかと気にしているらしい。

だがそれは関係ない。彼女だって本当は分かっていると思う。しかしそれを割り切れないことがあるのが人間という生き物だ。

「心配だったらタブレットであいつらのことを見られるし、シモーヌも見守ってやってくれ」

片付けを手伝いつつそう言った俺は、これもコーネリアス号から持ち帰ったタブレットを彼女に渡した。シモーヌのアカウントとパスワードで使えるようになったからな。

俺の方の機器と直接リンクはできないものの、逆にコーネリアス号に装備されていた備品との親和性は高いし、何より、コーネリアス号自体のAIとリンクができるのは大きい。

そうくんとかいくんを見せて」

シモーヌがそうタブレットに向けて声を掛けると、コーネリアス号のAIとリンクしたそれが、船体の陰で休んでいるそう達の姿を映しだした。この時はまだ、重症の三人は治療カプセルの中だったこともあって、そうけいかいと、他には若い雌が三人、寄り添い合うようにして眠っていた。船体に掴まったドローンのカメラで見てるので、ローターの音で睡眠の邪魔をすることもない。

それを見て、彼女もホッとしたようだった。

などと、とんだ<里帰り>ではあったが、シモーヌとしても心配事はありつつある意味では気持ちの区切りになったらしい。

その日からますます<お隣さん>として俺達の生活に溶け込んでいってくれたのだった。

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