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シモーヌ

会話(まあ、積もる話もあるだろうが)

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この時のメイフェアは、ロボットにあるまじき取り乱し方をしていたと思う。治療カプセルに縋りついて、『ごめんなさい、ごめんなさい』と何度も謝ってはいるがそれが果たして何に対しての謝罪なのかもさっぱり分からない状態だった。

なるほどこれは、ロボットに感情を再現するのはよそうと判断される訳だとさえ思ってしまったな。

また、この再会(?)が彼女にとって吉と出るか凶と出るかというのもこの時点では何とも言えなかった。何しろ、その透明な体を見るまでもなく、いくら秋嶋あきしまシモーヌの記憶や人格まで再現していようと亡くなった本人とは別の存在であることは変わりない訳で、その辺りをどう捉えるかという話にもなるだろうし。

もっとも、本来の彼女を知らない俺にしてみれば、<透明な体を持った秋嶋シモーヌという人間>でしかないから、本物かコピーかという話自体が意味がないけどな。

しかし、これでまたあの不定形生物の謎が深まった気もする。なぜ二千年も前の人間の情報を、しかも記憶まで再現するほどの緻密さで保持していたのか。

それはつまり、あの不定形生物は、単に遺伝情報だけでなく記憶や人格までも情報として取り込んでいるということになる。彼女が持つ秋嶋シモーヌとしての記憶がどこまで完全なのかはまだ分からないにしても、少なくともメイフェアのことを覚えている程度の記憶は持っている訳だ。

治療カプセルから出て身支度を整える為に、俺はいったん、部屋を出ることにした。女性のあられもない姿をしげしげと見るほどはデリカシーを欠いてはいないと自負してるからな。

俺と入れ替わりに着替えなどを手にしたセシリアが部屋に入ると、秋嶋シモーヌが、

「セシリア!?」

と声を上げるのも分かった。セシリアのことも覚えているのか。

まあ、せっかくの再会に野暮だとは思いつつも、身支度を整えるまでの間の彼女達の会話についてはモニターさせてもらった。

「痛っ! 腕が…?」

「無理をしないで、ちぎれかけてたのがようやく繋がったところだから」

「ちぎれ…って、え!? 何この腕!? 脚も!? これ、私の体なの!?」

「覚えてないの? あなたは河でワニ人間ワニに襲われて大怪我したのよ」

「河で…?

……だめ、思い出せない…

って言うか、ここはどこ? コーネリアス号じゃないみたいだけど?」

「ここは、錬是れんぜ様の宇宙船のメディカルルームです」

「錬是様?」

「はい。シモーヌと同じようにこの惑星に不時着した方です。

詳しいお話については錬是様からしていただくことになると思いますので、まずは用意をしましょう。左腕はギプスを付けます」

「あ…ああ。分かったわ。その時に、私のこの体のことも説明してもらえるの?」

「ええ、ちゃんと」

という会話を聞く限り、どうやら彼女は覚えていることと覚えていないことがあるようだった。

記憶が混乱してるのかもしれないな。

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