上 下
131 / 2,588
大家族

中継器(いろいろしなきゃならんこともある)

しおりを挟む
新暦〇〇〇七年六月二十八日



不定形生物がコーネリアス号の乗員を再現してる可能性については、はるかのことを考えればすぐに思い付いてもいい筈のことだったが、子供達が生まれてからは特に他に気になることが多くてそっちまで頭が回らなかったのかもしれない。何しろ今も、正直、それどころじゃなかったし。

ほまれが巣立ったことで、メイフェアXN12Aもあいつについて行ってしまったのだ。

…が、彼女には完全にそうできない事情がある。今の彼女は、充電なしだと半日くらいしか動けないからだ。必要のない時には多くの機能をサスペンドにして電力消費を抑えるということもできなくはないが、それにしたって数日くらいしかもたないだろう。

という訳で、いろいろ気になることはありつつも、今日は早速、その為の対策を講じることになった。

「ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございません」

ほまれに何かあればすぐさま駆けつけることのできるギリギリの場所まで俺達の家に近付いて対面したメイフェアXN12Aが深々と頭を下げていた。

「ああ、いいよいいよ、気にしなくて。お前はほまれを守るだけじゃなくて、周囲の警戒も行ってくれてるんだから、俺達にとっても意味があるし」

エレクシアを従えて、無線給電用の中継器の設置を行いつつ、俺はそう言った。

今では、それなりの価格帯以上の電子機器や家電類にはすべて完璧な防水対策が行われているので雨曝しでも壊れたりはしないのだが、念の為に簡単な屋根を作ってその下に置く形で設置してた。エレクシアはそんな俺の護衛の為に付き従っているのである。

まあ、設置も彼女に任せても良かったものの、戦いでは何の役にも立たないんだからせめてこれくらいはやらないと落ち着かなくてな。

もちろん、あのボクサー竜ボクサーの群れの残党やらが襲撃してくる可能性は考慮して監視カメラ代わりのドローンを、俺が元々持っていたマイクロドローンに加えてコーネリアス号に装備されていたものとコーネリアス号の工作室で新しく作ってもらったものも更に増やして全周警戒の上でのことだが。

しかしそちらの方はまったく気配がなく、完全に姿を消してしまっていた。もし、あいつらがこの縄張りを捨てたりしたのであればそう遠くないうちに別の群れがここを縄張りにするだろう。

「よし、これでOKかな。ほまれのいる群れの縄張りについては十分にカバーできる筈だ。後は、遮蔽物とかの陰になって届かない個所があるかもしれないが、それについては報告してくれたら随時対処するよ」

「ありがとうございます。感謝いたします。錬是れんぜ様」

再度深々と頭を下げるメイフェアXN12Aに手を振りながら、俺とエレクシアは家へと引き返した。

しかしこれで、ほまれが完全に巣立ったんだなということを俺は実感していた。めいしんもまた密林に戻ってしまった。俺が帰ろうとしている<家>は、もうあいつらの家じゃないんだな……

巣立ちとはそういうものだと分かっているし、姿だけならドローンで確認できるからいいんだが、やはり少し寂しさもあったのだった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

処理中です...