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ハーレム
鳥(と言うか鳥人間と言うか)
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「鳥だな」
「鳥ですね」
マイクロドローンのカメラが捉えた映像を見て、俺とエレクシアはそんなやり取りをしてた。画面には、鳥、いや、<鳥人間>が映っていたのだ。
一部赤い部分もあるオレンジ色のトサカのような髪、淡いレモン色の羽毛に覆われた体、両腕は翼になっていて、その途中から指が生えているようだった。と言うか、刃のカマと同じで小指が長く伸びて、それが翼になっているのか。
獲物を狙うかのような鋭い目でカメラを睨んでいるのが分かる。どうやら昆虫も餌にしてるようだ。
画面は、密や刃からも見える。すると密は怯えたように陰に隠れながら画面を見てた。どうやらこいつも天敵の一つらしいな。
だが、刃の方はと言うとそれほど怯えている風でもなかった。警戒はしてるようだからそれなりの存在なんだろうが、そんなに脅威ってほどでもなさそうだ。
しばらくドローンカメラで様子を窺ってると、ローバーの上に居座った鳥人間は、ドローンを狙うのは諦めたのかその場で毛繕いを始めたのだった。
その仕草は、鳥と言うより猫っぽくもある。しかも、また十代半ばくらいの少女っぽいプロポーションにも見えた。羽毛に覆われてるとはいえ当然、裸な訳で、密や刃に比べると控えめだが明らかに胸に膨らみがあるのが分かったからだ。さらにはかなり体も柔らかい感じで、自分の股間まで長い舌でぺろぺろと毛繕いをしていたんだが、まあそれで雌なんだろうなというのが分かったというのもある。
しかしこいつ、随分と寛いでるな。ローバーの屋根がよっぽどちょうどいい休憩場所に思えたんだろうか。
せっかくなのでこのまま観察を続けることにする。
「それにしても、この体にこの羽じゃ、あまりうまく飛べなさそうだな」
それが俺の正直な印象だった。体の大きさに比べ、羽が小さすぎるのだ。これでは精々、短い距離を滑空する程度のことしかできないだろう。それにこの惑星の重力は地球のそれとほぼ同じの〇.九九八G。ここまで体が大きいと羽ばたいて飛べないだろうな。だから鳥と言うよりは、ムササビやモモンガに近い生き物かもしれない。
とその時、鳥人間の様子が突然変わった。体に緊張が走り、身構えたのだ。視線の先は河だと思われた。そしてじっとそれを睨み付けてたと思った次の瞬間、カメラの前から姿が消える。かと思えば今度はローバーの窓から見える位置に現れて、水面を蹴り、そのまま体を翻してローバーの正面にガシッと掴まったのだった。
すると、フロントウインドウ越しに俺達と目が合うのが分かった。が、そいつは俺達のことはあまり気にした様子もなく、ガシガシとローバーを上り、また屋根の上に戻ったようだった。上る時に、そいつの、サルのそれに鋭い鉤爪が生えたかのような右足に魚が掴まれてるのが見えた。なるほど、これがこいつの狩りの仕方か。決して大きくはないが短距離の滑空ならできる翼で上から飛びつき足で獲物を捕らえると。
ドローンカメラの前に戻ってきた鳥人間は、魚を手に持ち替えて、バリバリとかじり始めた。頭と特に太い骨はどうやら食べないらしく、それ以外の部分を食べ切ったところで河に向かってポイと投げ捨てた。額まで届く長い舌で口の周りの血を丁寧に舐め取り、それが済むと再び毛繕いを始める。なるほどこいつも綺麗好きのようだ。
しかもこいつ、ローバーの屋根がよほど気に入ったのか、毛繕いが終わったらルーフキャリアにしゃがみこんで動かなくなった。キョロキョロと辺りを窺う様子は見せるが、そこから移動するような気配はない。
さて、どうしたものか。
「仕方ない。取り敢えずこいつのことは放っておいて、予定をこなそう。プローブ射出。河の中を調査する」
俺はそう告げて、河の中を調査する為のプローブを、フロントに設置したコンテナから射出した。
プローブとは、カメラや簡単な測定器を装備した小型の探査機のことだ。マイクロドローンもプローブの一種で、主に昆虫を模した飛行するタイプのことを言う。今回射出したのは、カエルを模したタイプで、水中の探査に用いる。
河に向けて射出されたプローブは水に落ちると、さっそく水中を泳ぐように移動し、カメラ映像を送ってくる。もっとも、水の濁りがひどくて十センチ先も見えない状態だが。
でもまあそれは分かってたことだから問題じゃない。代わりに高密度3Dソナーで水中の様子を探ってカメラ映像とミキシングし、映像化する。数種類のソナーを組み合わせていくつもの波長の音波を同時に使って精密な測定を行うものなので、かなり肉眼で見た映像に近いものが映し出される。それで見ると、結構な数の魚が泳いでることがまず確認された。他にも、まあまあな大きさの動物の影が見える。おそらくワニ的な生き物だろうな。
さらに、河底の地形も確認する。水深は深いところで三メートルほどあるようだ。ただし、底には厚い泥が堆積しているらしく、固い部分はもう少し深いところにあると思われた。
流木なども沈んでいるようで凹凸は非常に激しいが、船としての航行に大きな支障がありそうなものは確認できなかったのだった。
「鳥ですね」
マイクロドローンのカメラが捉えた映像を見て、俺とエレクシアはそんなやり取りをしてた。画面には、鳥、いや、<鳥人間>が映っていたのだ。
一部赤い部分もあるオレンジ色のトサカのような髪、淡いレモン色の羽毛に覆われた体、両腕は翼になっていて、その途中から指が生えているようだった。と言うか、刃のカマと同じで小指が長く伸びて、それが翼になっているのか。
獲物を狙うかのような鋭い目でカメラを睨んでいるのが分かる。どうやら昆虫も餌にしてるようだ。
画面は、密や刃からも見える。すると密は怯えたように陰に隠れながら画面を見てた。どうやらこいつも天敵の一つらしいな。
だが、刃の方はと言うとそれほど怯えている風でもなかった。警戒はしてるようだからそれなりの存在なんだろうが、そんなに脅威ってほどでもなさそうだ。
しばらくドローンカメラで様子を窺ってると、ローバーの上に居座った鳥人間は、ドローンを狙うのは諦めたのかその場で毛繕いを始めたのだった。
その仕草は、鳥と言うより猫っぽくもある。しかも、また十代半ばくらいの少女っぽいプロポーションにも見えた。羽毛に覆われてるとはいえ当然、裸な訳で、密や刃に比べると控えめだが明らかに胸に膨らみがあるのが分かったからだ。さらにはかなり体も柔らかい感じで、自分の股間まで長い舌でぺろぺろと毛繕いをしていたんだが、まあそれで雌なんだろうなというのが分かったというのもある。
しかしこいつ、随分と寛いでるな。ローバーの屋根がよっぽどちょうどいい休憩場所に思えたんだろうか。
せっかくなのでこのまま観察を続けることにする。
「それにしても、この体にこの羽じゃ、あまりうまく飛べなさそうだな」
それが俺の正直な印象だった。体の大きさに比べ、羽が小さすぎるのだ。これでは精々、短い距離を滑空する程度のことしかできないだろう。それにこの惑星の重力は地球のそれとほぼ同じの〇.九九八G。ここまで体が大きいと羽ばたいて飛べないだろうな。だから鳥と言うよりは、ムササビやモモンガに近い生き物かもしれない。
とその時、鳥人間の様子が突然変わった。体に緊張が走り、身構えたのだ。視線の先は河だと思われた。そしてじっとそれを睨み付けてたと思った次の瞬間、カメラの前から姿が消える。かと思えば今度はローバーの窓から見える位置に現れて、水面を蹴り、そのまま体を翻してローバーの正面にガシッと掴まったのだった。
すると、フロントウインドウ越しに俺達と目が合うのが分かった。が、そいつは俺達のことはあまり気にした様子もなく、ガシガシとローバーを上り、また屋根の上に戻ったようだった。上る時に、そいつの、サルのそれに鋭い鉤爪が生えたかのような右足に魚が掴まれてるのが見えた。なるほど、これがこいつの狩りの仕方か。決して大きくはないが短距離の滑空ならできる翼で上から飛びつき足で獲物を捕らえると。
ドローンカメラの前に戻ってきた鳥人間は、魚を手に持ち替えて、バリバリとかじり始めた。頭と特に太い骨はどうやら食べないらしく、それ以外の部分を食べ切ったところで河に向かってポイと投げ捨てた。額まで届く長い舌で口の周りの血を丁寧に舐め取り、それが済むと再び毛繕いを始める。なるほどこいつも綺麗好きのようだ。
しかもこいつ、ローバーの屋根がよほど気に入ったのか、毛繕いが終わったらルーフキャリアにしゃがみこんで動かなくなった。キョロキョロと辺りを窺う様子は見せるが、そこから移動するような気配はない。
さて、どうしたものか。
「仕方ない。取り敢えずこいつのことは放っておいて、予定をこなそう。プローブ射出。河の中を調査する」
俺はそう告げて、河の中を調査する為のプローブを、フロントに設置したコンテナから射出した。
プローブとは、カメラや簡単な測定器を装備した小型の探査機のことだ。マイクロドローンもプローブの一種で、主に昆虫を模した飛行するタイプのことを言う。今回射出したのは、カエルを模したタイプで、水中の探査に用いる。
河に向けて射出されたプローブは水に落ちると、さっそく水中を泳ぐように移動し、カメラ映像を送ってくる。もっとも、水の濁りがひどくて十センチ先も見えない状態だが。
でもまあそれは分かってたことだから問題じゃない。代わりに高密度3Dソナーで水中の様子を探ってカメラ映像とミキシングし、映像化する。数種類のソナーを組み合わせていくつもの波長の音波を同時に使って精密な測定を行うものなので、かなり肉眼で見た映像に近いものが映し出される。それで見ると、結構な数の魚が泳いでることがまず確認された。他にも、まあまあな大きさの動物の影が見える。おそらくワニ的な生き物だろうな。
さらに、河底の地形も確認する。水深は深いところで三メートルほどあるようだ。ただし、底には厚い泥が堆積しているらしく、固い部分はもう少し深いところにあると思われた。
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