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出血
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不審者が学校内に無断で侵入したというその事件は、特に被害も無かったことからそれほど大きな騒ぎにはならなかった。むしろそれ以上にその場にいた人間や学校側にとって大きな意味を持ったのは、この時の山下沙奈の姿である。
すっかり大人しくなったように見えていたにも拘らず、不審者に飛び掛かった時の姿はもはや人間のそれではなく、彼女の危険性を改めて認識させる結果となった。だが皮肉にもそのことが、伊藤玲那の存在はもう不要なのではないかという空気を払拭したのもまた事実。
このことから、
「では、来期も伊藤先生にお願いするということで」
学校長の発言どおり、取り敢えず来期もまた伊藤玲那が彼女を担当することがこの時点で決まったのだった。
そんなこととは露知らず、山下沙奈自身は相変わらずであったが。
彼女の狂暴性や獣性といったものが改めて示されたことで普通学級の生徒達からはさらに距離を置かれる結果にはなったものの、彼女はそんなことにはまるで関心がなかった。授業も真面目に受けるし、休憩時間には大人しくお絵かきに夢中になっているし、にこやか学級の他の生徒らとは概ね安定した関係を維持していた。
夏休みに入ってからも毎日学校に通い、授業にプールにと充実した毎日を送っていたと言っていいだろう。
彼女はどうやら学校が好きになっていたようだ。一般的にイメージされる<好き>というのとは少々ニュアンスが異なるかも知れないが、学校のない週末や祝祭日になると彼女はひどく退屈そうにしていたのである。
神河内家のリビングで絵を描いて時間を潰してはいたがそれにも飽きるとまた自慰行為に耽ったりしていたのだ。しかも、それは以前のようなただ刺激を得る為のものではなく、顔は紅潮し、瞳を潤ませ、汗をにじませ、呼吸も荒くなるという、完全に性的に高まっている状態のそれであった。
「……」
神河内良久はそれを見ても特に何とも思わなかった。性的に興奮した人間を見ると嫌悪感を抱くことが多い筈が、彼女に対しては何故かそれほどでもなく、気にすることもなく人形作りに没頭していられたのである。
だが、この日は違った。彼はいつも通り作業に没頭していただけなのだが、その背後で急に、
「うわっ!!」
っという明らかにこれまでとは違う声を彼女が上げたのだ。さすがに何事かと彼が振り返ると、そこには真っ赤に染まった自分の手を呆然と見詰めている彼女の姿があったのだった。
「…血…?」
すっかり大人しくなったように見えていたにも拘らず、不審者に飛び掛かった時の姿はもはや人間のそれではなく、彼女の危険性を改めて認識させる結果となった。だが皮肉にもそのことが、伊藤玲那の存在はもう不要なのではないかという空気を払拭したのもまた事実。
このことから、
「では、来期も伊藤先生にお願いするということで」
学校長の発言どおり、取り敢えず来期もまた伊藤玲那が彼女を担当することがこの時点で決まったのだった。
そんなこととは露知らず、山下沙奈自身は相変わらずであったが。
彼女の狂暴性や獣性といったものが改めて示されたことで普通学級の生徒達からはさらに距離を置かれる結果にはなったものの、彼女はそんなことにはまるで関心がなかった。授業も真面目に受けるし、休憩時間には大人しくお絵かきに夢中になっているし、にこやか学級の他の生徒らとは概ね安定した関係を維持していた。
夏休みに入ってからも毎日学校に通い、授業にプールにと充実した毎日を送っていたと言っていいだろう。
彼女はどうやら学校が好きになっていたようだ。一般的にイメージされる<好き>というのとは少々ニュアンスが異なるかも知れないが、学校のない週末や祝祭日になると彼女はひどく退屈そうにしていたのである。
神河内家のリビングで絵を描いて時間を潰してはいたがそれにも飽きるとまた自慰行為に耽ったりしていたのだ。しかも、それは以前のようなただ刺激を得る為のものではなく、顔は紅潮し、瞳を潤ませ、汗をにじませ、呼吸も荒くなるという、完全に性的に高まっている状態のそれであった。
「……」
神河内良久はそれを見ても特に何とも思わなかった。性的に興奮した人間を見ると嫌悪感を抱くことが多い筈が、彼女に対しては何故かそれほどでもなく、気にすることもなく人形作りに没頭していられたのである。
だが、この日は違った。彼はいつも通り作業に没頭していただけなのだが、その背後で急に、
「うわっ!!」
っという明らかにこれまでとは違う声を彼女が上げたのだ。さすがに何事かと彼が振り返ると、そこには真っ赤に染まった自分の手を呆然と見詰めている彼女の姿があったのだった。
「…血…?」
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