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再構築

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発見されたものは、バディだけではなかった。ひょっとするとバディ以上の発見とも言えるかもしれない物が発見されたのだ。

それは、惑星御津志筑みつしづきの衛星軌道上に設置された大規模発電衛星からの送電を受信する為の設備だった。一部故障していた為にそのままでは使えなかったが、地下都市に残された資材を流用することで稼働できた。発電衛星は、御津志筑みつしづきを襲った災禍から三千五百年が過ぎても稼働を続けていたのだが、その存在もそれを利用する技術も失伝していたのである。

と言うか、折守市の地熱発電所は万が一の時の為のバックアップとして本来は建設されたものだったのだが、その事実が伝わっていなかったらしい。当時の混乱ぶりが窺い知れるというものだろう。

なお、発電衛星から得られる電力は、折守市の地熱発電所の実に二十倍に相当するものだった。これにより折守市の電力事情は劇的に改善。ほぼ使い放題と言えるまでになった。

豊富な電力は折守市の技術力向上に貢献。それに伴って生活インフラの再構築も行われ、ひめが発見されてからも地球の二十世紀半ばごろ相当だった生活レベルは二十世紀終盤ごろ相当にまで引き上げられた。

それでも、長年染みついた生活習慣は急激には変わらず、折守市の住人達の生活は相変わらず質素で堅実なものだったという。

十三体のバディ達はひめと連携して折守おりかみ市のライフライン維持の為に働くことになり、発見された地下都市も改めて整備され、そこに残された施設を利用した、市の発展に資する研究開発を行う基地となった。

それを発見したばかりの頃、折守おりかみ市全体が大騒ぎになり、浅葱あさぎが言ったことがある。

「こんな大変なことになってしまって良かったんだろうか」

戸惑う彼女にひめはあくまで優しかった。

浅葱あさぎ様が戸惑うのも無理はないと思います。ですがこれは必要なことだったのです。この世界の人達が無事にこれからも幸せに生きて行くためには。

浅葱あさぎ様。どうぞ胸を張ってください。浅葱様は立派なことを成し遂げたのです」

「そうか。それでいいんだな」

そんな風に言った浅葱は、すっかり大人の女性になった今も砕氷さいひを続けている。 

だけど来月からは砕氷さいひとしての仕事も休みとなる予定だ。結婚し子供を生す準備に入るからだ。

このように、生活習慣や考え方に大きな変化はやはりなかったのだった。

しかしそれもいずれは変化していくかもしれない。折守おりかみ市は現在、人口が横這いから微増に転じたのである。

となればまた状況も変化していくのだから。

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