愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット花嫁、アリシアのブライダル狂騒曲

エリナ・バーンズ、ケジメをつける

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『千堂アリシアと千堂京一の結婚式というていでプレゼンを行う』

それを提案したのは、エリナ・バーンズだった。千堂のことを愛している彼女ではあるものの、彼の気持ちが自分には向いていないことは察していた。なのに、千堂アリシアを妬んで<事件>を起こしてしまった自分自身を恥じ、今ではある程度の割り切りもできるようになっているのだ。

「! それは……!」

彼女の思いがけない提案に息を呑んだアリシアに、エリナは、

「いいの。これは私なりの<ケジメ>だから」

と告げた。

ロボットであるアリシアよりはむしろまだ<千堂と結婚できる可能性>があるはずなのだが、彼の気持ちが自分に向けられることがないのも理解してしまって、これを機会に踏ん切りをつけるというのもあったそうだ。

だからこそアリシアは、全力でこの<結婚式>に臨む。本気で、

千堂京一せんどうけいいちと共に人生を歩みだすための儀式として』

ここに立ったのだ。そんなアリシアを、千堂がとても凛々しく引き締まった表情のはずなのに途轍もない穏やかさも感じられる姿で、迎えてくれた。

そんな彼の下に駆け寄ってしまいたくなるのを抑え、アリシアはゆっくりと進んでいく。

なんと荘厳な光景か。

約二分を掛けて千堂の隣に立つと、黒子の格好をした者達が現れて、たちどころに二人と役員達の間に花嫁と花婿の席を設け、アリシアと千堂は、役員達を<客>と見做した形でそこに着いた。二人の結婚を、役員達に見届けてもらうためということか。

そして<三々九度>を済ませ、二人揃って、役員達に深々と頭を下げる。

「おお~……」

役員達の間からも感嘆が漏れて、小さく拍手も起こった。すっかり普通の結婚式を見ている気分になっているようだ。それはつまり、白百合2139-PBの振る舞いがしっかりと<花嫁のそれ>になっているということでもあるだろう。そこで違和感が強ければ、このように没入できないであろうから。女性役員だけでなく、男性役員も見惚れている。十分に、

<文金高島田のアピール>

になったのではなかろうか。

そして、

「それでは次に、ウエディングドレスでの結婚式のデモンストレーションに移らせていただきます。その準備の間、こちらの資料をご覧ください」

エリナ・バーンズが告げると再び黒子が現れてスクリーンとプロジェクターと目隠し用の<幕>をセット。その幕の向こうで、<舞台転換>が行われる。それらが進められている間に、白百合2139-PBの機能上の特徴などを記したものを提示するわけだ。

舞台転換についても、エンターテイメント部の専門スタッフらの手により、まるで魔法のように見る間に模様替えが行われていたのだった。

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