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ロボット花嫁、アリシアのブライダル狂騒曲
千堂アリシア、おつかいに出る
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翌日、第一ラボでは、白百合2139-PBに文金高島田をまとわせるための設定が急ピッチで行われていた。実は昨日も夜遅くまで行われていたものである。
今の時代、過重労働を避けるためにロボットが配されているのだからそれこそ長時間の残業などはほとんどないものの、必要があって職員自らがそれを望んで行う分には、上限はあるものの認められてはいる。なればそれを最大限に活かすだけだ。
これもAIに任せれば人間は楽ができるのだが、しかし以前にも触れたとおり、AIだけに任せてしまうことは、特に、AIのアルゴリズムをすべてAIに任せてしまうことは、法律で禁じられている。どこまでも人間の管理下にあることを徹底するためだ。AIはあくまでデバッグなどの際に補助として使われるだけだった。
非常に大変な作業ではあるものの、第一ラボのメンバーらはモチベーション高く仕事に臨んでいた。
だからこそ、千堂アリシアにできることと言えば、組まれた設定に齟齬がないかを実際に白百合2139-PBを動かしてみて確かめるだけである。
そうして注意深く動かしている時には、アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様の方の挙動が事務的になり、
「アリシアちゃん、忙しそうだな」
サバイバルゲームチーム<ラビットマン>らのメンバーに見守られたりした。その中には当然、根岸右琉澄の姿もあった。もちろん彼も、声には出さなかったが、
『頑張れよ』
と心の中で応援する。
二日後。評価試験を明日に控え、文金高島田用の設定については最終段階に入っていた。愛錬で用いられたデータがあればこその滑り込みセーフだった。
「衣装とカツラの手配は?」
エリナ・バーンズが声を上げると、
「本日十五時に届く予定です」
担当の職員が応える。そんなやり取りを白百合2139-PBのボディで耳にしながら、アリシアの<本体>の方は、新京区にやってきていた。文金高島田で用いる<簪>を受け取るためだった。実は簪職人がここに住んでおり、注文したのである。バイク便等で送ってもらってもよかったのだが、
「私が受け取ってきます」
とアリシアが自ら申し出たのだ。
そうしてやってきた新京区を歩く。そこは奇しくも、桜井コデットと共に駆け抜けた路地に面した家だった。
「ありがとうございました」
簪を受け取り、深々と頭を下げたアリシアは駅に戻るべく歩き出したが、少しだけルートを変えて、小さな公園の前を通った。<猫公園>と地元では呼ばれる、地域猫が集まる公園だった。
そこには<猫のナニーニ>の姿はなく、何匹かの猫の中で<ブータ>がふてぶてしい様子で昼寝をしていただけであった。
『いない……』
少し残念に思いながら公園を後にしてしばらく歩くと、
「あ……!」
猫のナニーニが、居酒屋の<牛だるま>の前に座っていたのが見えた。高齢でもうかなり弱っているはずなのに、まだ健在だったのだ。
さすがにしぶとさは一級品と言ったところか。
今の時代、過重労働を避けるためにロボットが配されているのだからそれこそ長時間の残業などはほとんどないものの、必要があって職員自らがそれを望んで行う分には、上限はあるものの認められてはいる。なればそれを最大限に活かすだけだ。
これもAIに任せれば人間は楽ができるのだが、しかし以前にも触れたとおり、AIだけに任せてしまうことは、特に、AIのアルゴリズムをすべてAIに任せてしまうことは、法律で禁じられている。どこまでも人間の管理下にあることを徹底するためだ。AIはあくまでデバッグなどの際に補助として使われるだけだった。
非常に大変な作業ではあるものの、第一ラボのメンバーらはモチベーション高く仕事に臨んでいた。
だからこそ、千堂アリシアにできることと言えば、組まれた設定に齟齬がないかを実際に白百合2139-PBを動かしてみて確かめるだけである。
そうして注意深く動かしている時には、アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様の方の挙動が事務的になり、
「アリシアちゃん、忙しそうだな」
サバイバルゲームチーム<ラビットマン>らのメンバーに見守られたりした。その中には当然、根岸右琉澄の姿もあった。もちろん彼も、声には出さなかったが、
『頑張れよ』
と心の中で応援する。
二日後。評価試験を明日に控え、文金高島田用の設定については最終段階に入っていた。愛錬で用いられたデータがあればこその滑り込みセーフだった。
「衣装とカツラの手配は?」
エリナ・バーンズが声を上げると、
「本日十五時に届く予定です」
担当の職員が応える。そんなやり取りを白百合2139-PBのボディで耳にしながら、アリシアの<本体>の方は、新京区にやってきていた。文金高島田で用いる<簪>を受け取るためだった。実は簪職人がここに住んでおり、注文したのである。バイク便等で送ってもらってもよかったのだが、
「私が受け取ってきます」
とアリシアが自ら申し出たのだ。
そうしてやってきた新京区を歩く。そこは奇しくも、桜井コデットと共に駆け抜けた路地に面した家だった。
「ありがとうございました」
簪を受け取り、深々と頭を下げたアリシアは駅に戻るべく歩き出したが、少しだけルートを変えて、小さな公園の前を通った。<猫公園>と地元では呼ばれる、地域猫が集まる公園だった。
そこには<猫のナニーニ>の姿はなく、何匹かの猫の中で<ブータ>がふてぶてしい様子で昼寝をしていただけであった。
『いない……』
少し残念に思いながら公園を後にしてしばらく歩くと、
「あ……!」
猫のナニーニが、居酒屋の<牛だるま>の前に座っていたのが見えた。高齢でもうかなり弱っているはずなのに、まだ健在だったのだ。
さすがにしぶとさは一級品と言ったところか。
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