愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行

カルクラのジャンク屋達、その死生観

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そうして、日が暮れるまでには、フライングタートルは、装甲まで外せるところは外されて持ち去られ、もはや元の形を保っていないほどに無残な姿を晒していた。幸い、自爆システムは作動しなかったようだ。というのも、アリシアがリンクした際に無効化したからというのもある。

一方、自爆したフライングタートルさえ、飛び散った破片をジャンク屋達は拾い集めていた。金属そのものがリサイクル業者に売れるからだ。

爆発に巻き込まれバラバラになった死体が転がっていても、そんなことは気にしない。死んだ奴が間抜けなだけなのだ。落ちていた装甲片に肉片がついていてもそれを指でつまんでそのまま捨てる。死に対する<穢れの認識>や<畏怖>は微塵もない。人間のバラバラ死体など、彼らにとっては何の利用価値もないただの<生ゴミ>なのだから。

たまに、怪我をした際に金属フレームを人工骨として移植している者がいると、その金属片や金歯なども回収されたりするにせよ、あまり旨味はないとされている。手間の割に儲けが少ないのだ。

こうして、クラヒも、目ぼしいパーツは回収してトラックに積み込み、

「よっしゃ。今日のところはこのくらいにしとこう」

そう言って運転席に乗り込んで自身の店に戻った。アリシアも当然、それに従う。

店に戻ると、クラヒは再び、

「メシだメシ。ついてこい」

言いながらまたあの屋台に行って夕食にし、それを終えると店で工作室を開けて、持ち帰った<戦利品>の品定めを行う。

なかなか機嫌が良さそうなので、まずまずの値打ちものが手に入ったということだろうか。さらに、

「はっは~っ! おあつらえ向きにJAPAN-2ジャパンセカンド製のリレーがあったぜ! おい、お前、そこに横になれ! ブルカは脱いでな!」

クラヒはアリシアに向かって、作業台に寝そべるように指示をした。

「はい……」

アリシアも素直に従った。そしてクラヒはそんな彼女の顔に張り付けたアルミテープを剝がしていく。するとその度に、アリシアのメインフレームには何とも言えない負荷が掛かるのが感じられた。まるで、醜い傷口を見られるのを恥じるように。

いや、この時の彼女は実際に、醜く破壊された自身の姿を恥じていたのだ。恥じて、それを見られることにストレスを感じていたのである。

しかしクラヒはそんなことにはお構いなしに彼女の破壊された顔を覗き込んで、ラジオペンチとピンセットを用いて部品を抜き取った。クラヒがフライングタートルの中からはぎ取ってきたパーツに付いていたのと同じリレースイッチであった。そしてフライングタートルに使われていたそれを、元々のリレースイッチが付いていた場所に取り付けたのだった。

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