愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行

クラヒ、ジャンク屋たるゆえん

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こうしてアリシア2234-LMNを回収したクラヒは、事務所が完全に倒壊した自身のジャンク屋に戻り、ジャンク品に埋もれていたトラックの荷箱の扉を開けた。

そこには、机と椅子が。実は元々、それを<事務所>代わりに使っていたのである。後に改めて事務所を建てたもののそれは今回、ゲリラによって完全に破壊され、仕方なく改めてこちらを使うことにしたのだ。

そこに、器用にクレーンを用いてアリシアを<搬入>したクラヒは、ボロボロのソファの上に彼女を寝かせ、言い放った。

「お前の主人の所為で俺の店はメチャクチャだ。だから俺にはお前を自由にする権利がある。店が元に戻るまでお前にゃ役に立ってもらうぞ」

自分が千堂をゲリラに売ったのが原因だというのによくもまあ抜け抜けと言えるものだが、そのくらいでないとここではまともに生きていけないのだろう。

「はい……」

アリシアはそんなクラヒの言い草に、ただ一言そう応える。

どうせ自分はロボット。ここまで破損すれば放棄されても当然だ。そんな自分が賠償金代わりになるというのなら、むしろ御の字だとも言える。解体されジャンク品としてパーツごとに売られたとしても、それはそれで構わない。

千堂京一せんどうけいいちさえ無事であるなら。

『千堂様……どうかお幸せに……』

顔の半分を失い表情を作れなくなっているにも拘らず、やはり彼女のかおは泣いているようにも見えた。もう千堂に会えないことを覚悟して……



なのに、クラヒは、自身の店のジャンク品を漁り始めた。どうやらロボット用の部品を見ているようだ。

「これはダメだ……こいつも…ダメだな……こいつと…こいつの部品を加工すりゃ何とかなるか……?」

ぶつぶつと独り言を口にしながら部品を手に戻ってくる。そして<事務所>代わりのトラックの荷箱の隣にあった同様の荷箱を開けると、そこは様々な工具が雑然と置かれた工作室らしきものだった。

そちらのスイッチを入れて電源を立ち上げ、クラヒ自身はアリシアのところに来て、彼女の左肩を覗き込んだ。そこは、左腕をはめ込んで接合するためのソケットだった。その部分に、ジャンク品の中から持ってきたレイバーギア用の腕を当てて、

「ふん。ちょっと面倒だが、いけそうだ……」

そう言って油性ペンでジャンク品の腕にあれこれ書き込み、それを持って工作室の方へと移り、<ボール盤>と呼ばれるドリルの付いた工作機械にレイバーギアの腕を固定して、手慣れた様子で加工し始めた。

『使える部品がないなら自分で作る』

ジャンク屋のジャンク屋たるゆえんだ。

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