648 / 804
ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行
千堂アリシア、ハンナの仕事ぶりを見る
しおりを挟む
『ミセス・ハンナの仕事ぶりを拝見させていただいてよろしいでしょうか?』
ハンナの仕事ぶりに興味が湧いてしまった千堂アリシアは、彼女にそう問い掛けた。するとハンナは、
「千堂アリシア様。私はロボットですので、『ミセス』は必要ありません。ただハンナとお呼びください」
と応えてきた。アリシアとしては、ハウスキーパーに対しては必ず『ミセス』とつけるという知識があったためそう呼んだのだが、なるほど確かにロボットに『ミセス』はおかしいだろう。そしてその上で、ハンナは、
「お客様のご要望には極力応えるように申し付かっております。ですので、お客様が同行いただける範囲であれば、構いません」
とも告げる。それに対して、アリシアも、
「ありがとうございます」
深々と頭を下げた。
こうしてアリシアは、ハンナの働きぶりを見ることとなった。
なお、貴族などの屋敷となると<執事>などもつきもののように思うかもしれないが、アルビオンにおいてメイトギアのハウスキーパーを使っている場合は、それだけで十分、すべての役目がこなせてしまうので、敢えて執事を置いていないところも多かった。
ただし、ロボットであるメイトギアには最終的に人間が行うべき判断はできないので、主人に代わってその<判断>を行うための秘書などを家に置いているところがほとんどでもある。<秘書>の代わりに執事を置いているという家もあるが。
エドモント・ジョージ・フレデリックは著名な医師でもあるため、<電話>がひっきりなしに掛かってくる。それらはすべてハンナが受け、セールスなどの、
『取り次がなくていい』
とエドモントから命じられているものについては、
『間に合っております』
と容赦なく切り、それ以外のものについてはまずは人間である秘書に取り次ぎ、その秘書が改めてエドモントに取り次ぐかどうかを決める。
その電話を、ハンナは屋敷内で運用されているすべてのメイドの管理を行いながら対応していた。当然、あくまで彼女のシステム内で対処しているため、表面上は実に淡々としたものである。
また、現在この屋敷には、<レディースメイド>、<チェインバーメイド>、<キッチンメイド>、<パーラーメイド>、<ランドリーメイド>が、ハンナの管理下で運用されている。
いずれもメイトギアなので、当然、<通信>によってやり取りしており、いちいち言葉で指示を出したり報告したりはしない。外見上は、それぞれが淡々と自身の仕事をこなしているだけであった。
ハンナの仕事ぶりに興味が湧いてしまった千堂アリシアは、彼女にそう問い掛けた。するとハンナは、
「千堂アリシア様。私はロボットですので、『ミセス』は必要ありません。ただハンナとお呼びください」
と応えてきた。アリシアとしては、ハウスキーパーに対しては必ず『ミセス』とつけるという知識があったためそう呼んだのだが、なるほど確かにロボットに『ミセス』はおかしいだろう。そしてその上で、ハンナは、
「お客様のご要望には極力応えるように申し付かっております。ですので、お客様が同行いただける範囲であれば、構いません」
とも告げる。それに対して、アリシアも、
「ありがとうございます」
深々と頭を下げた。
こうしてアリシアは、ハンナの働きぶりを見ることとなった。
なお、貴族などの屋敷となると<執事>などもつきもののように思うかもしれないが、アルビオンにおいてメイトギアのハウスキーパーを使っている場合は、それだけで十分、すべての役目がこなせてしまうので、敢えて執事を置いていないところも多かった。
ただし、ロボットであるメイトギアには最終的に人間が行うべき判断はできないので、主人に代わってその<判断>を行うための秘書などを家に置いているところがほとんどでもある。<秘書>の代わりに執事を置いているという家もあるが。
エドモント・ジョージ・フレデリックは著名な医師でもあるため、<電話>がひっきりなしに掛かってくる。それらはすべてハンナが受け、セールスなどの、
『取り次がなくていい』
とエドモントから命じられているものについては、
『間に合っております』
と容赦なく切り、それ以外のものについてはまずは人間である秘書に取り次ぎ、その秘書が改めてエドモントに取り次ぐかどうかを決める。
その電話を、ハンナは屋敷内で運用されているすべてのメイドの管理を行いながら対応していた。当然、あくまで彼女のシステム内で対処しているため、表面上は実に淡々としたものである。
また、現在この屋敷には、<レディースメイド>、<チェインバーメイド>、<キッチンメイド>、<パーラーメイド>、<ランドリーメイド>が、ハンナの管理下で運用されている。
いずれもメイトギアなので、当然、<通信>によってやり取りしており、いちいち言葉で指示を出したり報告したりはしない。外見上は、それぞれが淡々と自身の仕事をこなしているだけであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
死の惑星に安らぎを
京衛武百十
SF
惑星間航行技術を確立させて既に二千年。その活動範囲を銀河系全体へと広げていた人類は、多くの惑星を開拓、開発し、人間が居住可能な環境へと作り変え、次々と移住を行っていた。
そんな中、<星歴>一九九六年に発見された惑星リヴィアターネは、人類に大きな衝撃を与えた。なにしろそれは、何も手を付けなくてもほぼ地球と同じ環境であったのみならず、明らかに人工物、いや、紛れもなく地球人類以外の手による住居跡が遺跡として残されていたのである。
文明レベルとしては精々西暦一〇〇〇年前後頃の地球程度と推測されたが、初めて明確な形で確認された地球人類以外の知的生命体の痕跡に、発見当時は大いに盛り上がりも見せたのだった。
綿密な調査が行われ、大規模な惑星改造の必要もなく即移住可能であることが改めて確認され、また遺跡がある意味では観光資源になるとも期待されたが故に移住希望者が殺到。かつてない規模での移住が開始されることとなった。
惑星リヴィアターネは急速に開発が進み各地に都市が形成され、まさに本当に意味での<第二の地球>ともてはやされたのだった。
<あれ>が発生するまでは……。
人類史上未曽有の大惨事により死の惑星と化したリヴィアターネに、一体のロボットが廃棄されるところからこの物語は始まることとなる。
それは、人間の身の回りの世話をする為に作られた、メイドを模したロボット、メイトギアであった。あまりに旧式化した為に買い手も付かなくなったロボットを再利用した任務を果たす為に、彼女らはここに捨てられたのである。
筆者より
なろうで連載していたものをこちらにも掲載します。
なお、この物語は基本、バッドエンドメインです。そういうのが苦手な方はご注意ください。
メルシュ博士のマッドな情熱
京衛武百十
SF
偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLSと名付けられた未知の病により死の星と化した惑星リヴィアターネに、一人の科学者が現れた。一切の防護措置も施さず生身で現れたその科学者はたちまちCLSに感染、死亡した。しかしそれは、その科学者自身による実験の一環だったのである。
こうして、自らを機械の体に移し替えた狂気の科学者、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士のマッドな情熱に溢れた異様な研究の日々が始まったのであった。
筆者より。
「死の惑星に安らぎを」に登場するマッドサイエンティスト、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士サイドの物語です。倫理観などどこ吹く風という実験が行われます。ご注意ください。
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
決戦の夜が明ける ~第3堡塁の側壁~
独立国家の作り方
SF
ドグミス国連軍陣地に立て籠もり、全滅の危機にある島民と共に戦おうと、再上陸を果たした陸上自衛隊警備中隊は、条約軍との激戦を戦い抜き、遂には玉砕してしまいます。
今より少し先の未来、第3次世界大戦が終戦しても、世界は統一政府を樹立出来ていません。
南太平洋の小国をめぐり、新世界秩序は、新国連軍とS条約同盟軍との拮抗状態により、4度目の世界大戦を待逃れています。
そんな最中、ドグミス島で警備中隊を率いて戦った、旧陸上自衛隊1等陸尉 三枝啓一の弟、三枝龍二は、兄の志を継ぐべく「国防大学校」と名称が変更されたばかりの旧防衛大学校へと進みます。
しかし、その弟で三枝家三男、陸軍工科学校1学年の三枝昭三は、駆け落ち騒動の中で、共に協力してくれた同期生たちと、駐屯地の一部を占拠し、反乱を起こして徹底抗戦を宣言してしまいます。
龍二達防大学生たちは、そんな状況を打破すべく、駆け落ちの相手の父親、東京第1師団長 上条中将との交渉に挑みますが、関係者全員の軍籍剥奪を賭けた、訓練による決戦を申し出られるのです。
力を持たない学生や生徒達が、大人に対し、一歩に引くことなく戦いを挑んで行きますが、彼らの選択は、正しかったと世論が認めるでしょうか?
是非、ご一読ください。
鉄錆の女王機兵
荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。
荒廃した世界。
暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。
恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。
ミュータントに攫われた少女は
闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ
絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。
奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。
死に場所を求めた男によって助け出されたが
美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。
慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。
その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは
戦車と一体化し、戦い続ける宿命。
愛だけが、か細い未来を照らし出す。
もうダメだ。俺の人生詰んでいる。
静馬⭐︎GTR
SF
『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。
(アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる