愛しのアリシア

ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌

エピローグ

こうして墓参も終え、獅子倉ししくら大和やまとが間倉井まくらい診療所の医師としてしっかりと収まったのも見届け、それにより千堂アリシアの間倉井まくらい診療所での役目も終わった。

久美と亜美も、確実に大和の下でも＜ナース仕様のメイトギア＞として運用されており、問題もない。むしろ大和が医師として着任したことでJAPAN-2ジャパンセカンドとのパイプもある意味では太くなり、その＜コネ＞を利用することを躊躇ったりはしない大和の本領が活かされることもあるだろう。

なお、好羽このはの遺骨が安置されている間は遠慮していた大和も、納骨が済んだことで晴れて好羽このはの自宅だった家を借り受け、そこに住むことになった。それまでは実は、明帆野あけぼの荘に間借りしていたのだ。

経済的には元々裕福だった大和ならではの気遣いだった。なにしろその間の宿泊料も満額支払っていたのである。施設の扱いも丁寧で、従業員である美月や訓臣だけでなくその家族の立志に対してさえ気遣いを忘れないその在り方は、明帆野あけぼの荘にとってはまさに＜上客＞だった。

まあこれは、明帆野あけぼの荘が、客室のすべてが完全に埋まるということがない施設だったからできたことでもあるが。

いずれにせよ、明帆野あけぼのの住人達も大和の人柄もあってすっかり馴染み、信頼を寄せるようになっている。

こうなればもう、千堂アリシアのサポートも必要ないだろう。加えて大和は、メイトギアではない、四脚四腕で簡素な姿の＜見るからにロボット＞という外見をした、

＜お手伝いロボット＞

も取り寄せて、自分の身の回りの世話を任せるようにした。ちなみに機種名は、＜ホビット2208-HHS（ホームヘルパー・スタンダード）＞。千堂の自宅の保全用に導入されている＜ホビット1229-IS（インスパクター・スタンダード）＞の兄弟機にしてメイトギアの下位互換機でもある。

これなら、＜メイトギアアレルギー＞の者でも大丈夫なのだ。ロボットらしいロボットであれば、メイトギアに対して感じるような違和感もない。それにこれはあくまで、一人暮らしをすることになる大和の身の回りの世話をしてもらうためのものであって、あまり人前に出すようなものでもない。

なるべくロボットに頼らないようにと考えている明帆野あけぼのの住人にしても、極端な＜原理主義＞に走っているわけでもないので、その程度のロボットが増えるだけなら気にならないようだ。

以前は久美や亜美が好羽このはの身の回りの世話をしてくれていたのと同じだ。大和はその辺、久美と亜美を＜ナース＞として割り切っただけである。



それらを確認し、千堂アリシアは、久美とのリンクを静かに解除したのだった。