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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
間倉井医師の魂を受け継ぐ者、獅子倉大和
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好羽の葬儀から一週間。辻堂ニーナは無事に寛慈と共に退院し、迎えに来た安吾と共に自宅へと帰っていった。
なお、この時、対応した亜美は千堂アリシアがリンクしたものだった。だから安吾も安心して接することができた。
そして同時に、間倉井医師の後任として、獅子倉大和が就任することになった。
ちなみに、その獅子倉大和は、一見すると女性のようにも見える男性だった。肩まで伸ばした黒髪はどこまでも艶やかで、背も百七十五と特別大きいわけでもなく、すらりとした印象で、白衣をまとっていると本当に女医のようにも見えるのだ、しかも本人の性自認も<女性>だという。
なので、
「え? 大和ってえからてっきり男の人かと……!」
「バカ! 先生はこう見えても男性だ!」
患者同士でそんなやりとりもあったりした。
「あはは♡ 私は別にどう受け取っていただいても構いませんよ」
大和は穏やかにそう告げた。けれど、大和が間倉井医師の後継者に選ばれた一番の理由を、住人達はやがて知ることになる。いかにも女性的な見た目とは裏腹に、大和の精神がいかに<剛の者>であるかということを。
『女性的なのに剛の者?』
と思う者もいるかもしれないが、いわゆる<大和撫子>とかつて呼ばれた女性達も、その本質は非常に豪胆であったことはまぎれもない事実だ。そうでなければ、『どんな時もたおやかさを失わない』などと、そんな姿を維持することなどできはしない。でなればただの鈍感でしかなく、細やかな心配りなどできるはずもない。
死地に赴く夫を狼狽えることなく送り出せるような女性が、ただ繊細なだけのお人形のはずがないのだ。
それで言えば、好羽は間違いなく<大和撫子の気概を受け継ぐ者>の一人であっただろう。そして獅子倉大和も、肉体は男性のそれだが気性はまさしく大和撫子であると言える。
加えて、獅子倉大和は、性自認こそ女性だが、だからと言って男性を恋愛対象と見ているわけでもない。女性にも恋愛に関心がない者がいるのと同じで、大和は恋愛そのものに関心がないのだ。ゆえに恋愛経験もなく、医学の道一筋だった。
言い寄られることは多かったのだが、その一切合切をスルーしてきている。また、紛争地域で活動していた時は、女性的に振る舞うと面倒もあったので、一応は男性のように見える身だしなみを心得ていた。
なので、厳密には、
<無性寄りの女性>
と言った方が近いだろうか。
そのこともあって、世のLGBT問題にも関心がない。
『他人は他人。自分は自分』
が徹底されているのだ。ゆえに男性も女性もまったく特別扱いしない。どこまでもそれぞれの症状に向き合うだけである。
間倉井医師の後任としてこれ以上の人材はいないだろう。
なお、この時、対応した亜美は千堂アリシアがリンクしたものだった。だから安吾も安心して接することができた。
そして同時に、間倉井医師の後任として、獅子倉大和が就任することになった。
ちなみに、その獅子倉大和は、一見すると女性のようにも見える男性だった。肩まで伸ばした黒髪はどこまでも艶やかで、背も百七十五と特別大きいわけでもなく、すらりとした印象で、白衣をまとっていると本当に女医のようにも見えるのだ、しかも本人の性自認も<女性>だという。
なので、
「え? 大和ってえからてっきり男の人かと……!」
「バカ! 先生はこう見えても男性だ!」
患者同士でそんなやりとりもあったりした。
「あはは♡ 私は別にどう受け取っていただいても構いませんよ」
大和は穏やかにそう告げた。けれど、大和が間倉井医師の後継者に選ばれた一番の理由を、住人達はやがて知ることになる。いかにも女性的な見た目とは裏腹に、大和の精神がいかに<剛の者>であるかということを。
『女性的なのに剛の者?』
と思う者もいるかもしれないが、いわゆる<大和撫子>とかつて呼ばれた女性達も、その本質は非常に豪胆であったことはまぎれもない事実だ。そうでなければ、『どんな時もたおやかさを失わない』などと、そんな姿を維持することなどできはしない。でなればただの鈍感でしかなく、細やかな心配りなどできるはずもない。
死地に赴く夫を狼狽えることなく送り出せるような女性が、ただ繊細なだけのお人形のはずがないのだ。
それで言えば、好羽は間違いなく<大和撫子の気概を受け継ぐ者>の一人であっただろう。そして獅子倉大和も、肉体は男性のそれだが気性はまさしく大和撫子であると言える。
加えて、獅子倉大和は、性自認こそ女性だが、だからと言って男性を恋愛対象と見ているわけでもない。女性にも恋愛に関心がない者がいるのと同じで、大和は恋愛そのものに関心がないのだ。ゆえに恋愛経験もなく、医学の道一筋だった。
言い寄られることは多かったのだが、その一切合切をスルーしてきている。また、紛争地域で活動していた時は、女性的に振る舞うと面倒もあったので、一応は男性のように見える身だしなみを心得ていた。
なので、厳密には、
<無性寄りの女性>
と言った方が近いだろうか。
そのこともあって、世のLGBT問題にも関心がない。
『他人は他人。自分は自分』
が徹底されているのだ。ゆえに男性も女性もまったく特別扱いしない。どこまでもそれぞれの症状に向き合うだけである。
間倉井医師の後任としてこれ以上の人材はいないだろう。
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