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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
JAPAN-2、徹底的な防災対策を行う
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「爆弾低気圧が発生したんですって」
「やだ、洗濯物干しっぱなしだよ~。買い物行く前にといれてくれたかな~」
JAPAN-2のメイトギア課でも、職員同士がそんな話をしていたりした。
とは言え、洗濯物が濡れることを心配する程度で、深刻さはまるでない。洗濯物の心配をしている者も、自宅で運用しているメイトギアが買い物に行くタイミングのはずだったので、この急変に対応してくれているかを心配しているだけである。勤務中なので私用の連絡を取るわけにもいかないしで。
なお、都市としてのJAPAN-2を取り囲む<人口の山>は、周囲から吹き付ける風を巧みに整流してJAPAN-2の上空を通り抜けるようにし、反対側の山がまたそれを受け流す形になっている。
これは、いわゆる<オープンカー>が空気の流れを制御して搭乗者に強い風が直接吹き付けないようにされているのと原理は同じだった。その規模が数十キロ単位というだけだ。そのために緻密に計算された形状をしている。
もっとも、それを知らなければ不自然なまでに綺麗に高さが揃った山にしか見えないが。
いずれにせよこのおかげで、JAPAN-2においては<突風被害>というものはほとんど発生しない。また、大雨についても、地下(正しくは本来の地面の上に築かれた基礎部分)に巨大な排水設備が設けられていて、いわゆる<都市型水害>のようなものも考慮されている。ちなみに排水能力は六百ミリメートル毎時と、二十一世紀初頭の日本の一般的な都市の約十倍以上のそれを誇り、一部では過剰品質と揶揄されながらも、実際に絶大な安心感として現在の生活の礎を築いている。
なお、千堂京一の屋敷があるのは外周部の<人口の山>ではなく、その内側の元々の地形としての山間部にあり、かつて千堂アリシアとドライブの際に眺めた湖は、大雨の際には洪水を起こすこともあったりもする。ただし、周囲に建てられた別荘はそれを想定した造りとなっており、大きな被害に遭うこともないが。
また、千堂京一の屋敷はなだらかな頂上付近に建てられているので土砂災害に見舞われたこともない。
地球において特に二十一世紀頃に気象の変化に伴う大きな災害が立て続けに発生した経験を活かして、その辺りについては十分な対策が施されているのだ。これは、自然災害と共に暮らしてきたとも言われる日本人をルーツに持つJAPAN-2ならではのものとも言えるかもしれない。
しかし残念ながら、明帆野のような小規模な<有志による開拓地>においてはその限りではなかった。
一応、対策もされているものの、都市としてのJAPAN-2のそれのような<過剰品質>とまで言われるものでないこともまた事実である。
「やだ、洗濯物干しっぱなしだよ~。買い物行く前にといれてくれたかな~」
JAPAN-2のメイトギア課でも、職員同士がそんな話をしていたりした。
とは言え、洗濯物が濡れることを心配する程度で、深刻さはまるでない。洗濯物の心配をしている者も、自宅で運用しているメイトギアが買い物に行くタイミングのはずだったので、この急変に対応してくれているかを心配しているだけである。勤務中なので私用の連絡を取るわけにもいかないしで。
なお、都市としてのJAPAN-2を取り囲む<人口の山>は、周囲から吹き付ける風を巧みに整流してJAPAN-2の上空を通り抜けるようにし、反対側の山がまたそれを受け流す形になっている。
これは、いわゆる<オープンカー>が空気の流れを制御して搭乗者に強い風が直接吹き付けないようにされているのと原理は同じだった。その規模が数十キロ単位というだけだ。そのために緻密に計算された形状をしている。
もっとも、それを知らなければ不自然なまでに綺麗に高さが揃った山にしか見えないが。
いずれにせよこのおかげで、JAPAN-2においては<突風被害>というものはほとんど発生しない。また、大雨についても、地下(正しくは本来の地面の上に築かれた基礎部分)に巨大な排水設備が設けられていて、いわゆる<都市型水害>のようなものも考慮されている。ちなみに排水能力は六百ミリメートル毎時と、二十一世紀初頭の日本の一般的な都市の約十倍以上のそれを誇り、一部では過剰品質と揶揄されながらも、実際に絶大な安心感として現在の生活の礎を築いている。
なお、千堂京一の屋敷があるのは外周部の<人口の山>ではなく、その内側の元々の地形としての山間部にあり、かつて千堂アリシアとドライブの際に眺めた湖は、大雨の際には洪水を起こすこともあったりもする。ただし、周囲に建てられた別荘はそれを想定した造りとなっており、大きな被害に遭うこともないが。
また、千堂京一の屋敷はなだらかな頂上付近に建てられているので土砂災害に見舞われたこともない。
地球において特に二十一世紀頃に気象の変化に伴う大きな災害が立て続けに発生した経験を活かして、その辺りについては十分な対策が施されているのだ。これは、自然災害と共に暮らしてきたとも言われる日本人をルーツに持つJAPAN-2ならではのものとも言えるかもしれない。
しかし残念ながら、明帆野のような小規模な<有志による開拓地>においてはその限りではなかった。
一応、対策もされているものの、都市としてのJAPAN-2のそれのような<過剰品質>とまで言われるものでないこともまた事実である。
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