503 / 804
ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
プロローグ
しおりを挟む
<ニューオクラホマ市騒乱事件>から半年。連日のようにニュースで取り上げられていたのも落ち着き、<都市としてのJAPAN-2>はすっかり平穏を取り戻していた。
まあもっとも、ニューオクラホマでの騒動自体、JAPAN-2には直接の影響はそれほど大きくなかったので、あくまで、事件が、
<AIおよびロボットの排斥を訴える者達>
が起こした大規模テロだったことにより、AIやロボットにまつわる様々な激しい論争が、テレビやネット上で繰り広げられたというだけのことである。
現在の科学技術の最先端を行き、AIやロボット抜きでは存在そのものが危うくなるとされているJAPAN-2ではあるものの、都市としてのそこに住む人間だけでなく、<JAPAN-2の職員>の中にも、様々な想いを抱く者がいることは事実。
よく、フィクションの中で描かれる、
<AIやロボットによる人間への反乱>
を懸念する者の存在は根強く、同じく<AIおよびロボットの排斥を訴える者達>によるテロだった<クイーン・オブ・マーズ号事件>の際にも同様の議論が白熱したのもまた、事実なのだ。
さすがに、
『AIもロボットもすべて排除せよ!』
的な極論を口にする者はごく一部だったものの、
『果たしてこのままAIやロボットへの依存度を高めていって大丈夫なのか?』
という漠然とした不安を訴える者は実は決して少なくないことが、今回の事件によっても明らかとなった。
ただし、
『では、AIやロボットに頼るのはどのくらいにとどめておくべきか?』
という話になると、それこそ立場の違いによってまったく意見が食い違ってしまい、前提ですら嚙み合わないという事態に至っていた。
中でも、医療に関する分野では、現在の医療技術はAIやロボット抜きではまるで成立しないのだ。新薬の開発などについても、AIを用いたシミュレーションの比率が非常に高まり、これによって動物実験の比率が大きく減っていたのである。
動物愛護を訴える者は、当然のように、
『すべてをAIによるシミュレーションに置き換えるべきだ!!』
と主張し、しかし、AIは決して完全無欠な存在ではないと考える者達からは、
『初期段階でのシミュレーションはいいとしても、最終的な<生体への影響>については動物実験は欠かせない!』
との反論が出て、両者の溝は狭まる気配すらなかったという。
この件についても、AIがさらに発展し精度を上げていくことで本当にすべてがシミュレーションに置き換えられていくのだが、それにはまだ数百年の時間を要し、しかも今度は、
『シミュレーション内で作られた<生体モデル>に苦痛を与えるのは人道に反するのでは?』
という意見が出てきたりと果てしないのではあるが、それについてもここでは割愛したい。
まあもっとも、ニューオクラホマでの騒動自体、JAPAN-2には直接の影響はそれほど大きくなかったので、あくまで、事件が、
<AIおよびロボットの排斥を訴える者達>
が起こした大規模テロだったことにより、AIやロボットにまつわる様々な激しい論争が、テレビやネット上で繰り広げられたというだけのことである。
現在の科学技術の最先端を行き、AIやロボット抜きでは存在そのものが危うくなるとされているJAPAN-2ではあるものの、都市としてのそこに住む人間だけでなく、<JAPAN-2の職員>の中にも、様々な想いを抱く者がいることは事実。
よく、フィクションの中で描かれる、
<AIやロボットによる人間への反乱>
を懸念する者の存在は根強く、同じく<AIおよびロボットの排斥を訴える者達>によるテロだった<クイーン・オブ・マーズ号事件>の際にも同様の議論が白熱したのもまた、事実なのだ。
さすがに、
『AIもロボットもすべて排除せよ!』
的な極論を口にする者はごく一部だったものの、
『果たしてこのままAIやロボットへの依存度を高めていって大丈夫なのか?』
という漠然とした不安を訴える者は実は決して少なくないことが、今回の事件によっても明らかとなった。
ただし、
『では、AIやロボットに頼るのはどのくらいにとどめておくべきか?』
という話になると、それこそ立場の違いによってまったく意見が食い違ってしまい、前提ですら嚙み合わないという事態に至っていた。
中でも、医療に関する分野では、現在の医療技術はAIやロボット抜きではまるで成立しないのだ。新薬の開発などについても、AIを用いたシミュレーションの比率が非常に高まり、これによって動物実験の比率が大きく減っていたのである。
動物愛護を訴える者は、当然のように、
『すべてをAIによるシミュレーションに置き換えるべきだ!!』
と主張し、しかし、AIは決して完全無欠な存在ではないと考える者達からは、
『初期段階でのシミュレーションはいいとしても、最終的な<生体への影響>については動物実験は欠かせない!』
との反論が出て、両者の溝は狭まる気配すらなかったという。
この件についても、AIがさらに発展し精度を上げていくことで本当にすべてがシミュレーションに置き換えられていくのだが、それにはまだ数百年の時間を要し、しかも今度は、
『シミュレーション内で作られた<生体モデル>に苦痛を与えるのは人道に反するのでは?』
という意見が出てきたりと果てしないのではあるが、それについてもここでは割愛したい。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる