愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

アームドエージェント、その成り立ち

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この時代、AIとAIによって制御されるロボットは、原則として人間を傷付けることはできないように設計されている。これは、散々創作物などによって描かれてきた、

<AIによる人間への反逆>

を未然に防ぐということ以上に、過去の火星大戦において戦闘用AIが挙げた戦果があまりにも大きすぎ、特に、ほとんど実質的な制限がなかった第一次火星大戦における人的被害が恐ろしいものであったことにより、

『AIによって制御される兵器を敵に使わせないため』

という打算の産物であった。何しろ現在の(というより第一次火星大戦の時点ですでに)AIは、その機能において人間を遥かに超越した存在なのだ。

『ロボットにも心がある!』

と主張する者がいることからも分かるように、

『心があるのでは?』

と人間に錯覚させる程度には高度な振る舞いができるのだから、当然のこととして人間にできる作業はほぼすべてAIにもできてしまうのである。

確かに、心を持たないがゆえに、創作などの点においては、

<心を持つからこその狂気じみた執念や執着を基にした鬼気迫る表現>

までは再現できないものの、逆を言えば、

『それしか人間がAIに勝る部分がない』

とも言えるわけで、日常的に行われることのほぼすべてがロボットで代用できてしまうのだ。それは、軍事的な作戦行動の分野も例外ではない。

なるほど、人間は時に常識を超えた力を発揮することもあるのは事実だ。しかしそれはごく一部の限られた例外的な事例でしかなく、それ以外の<普通の兵士>が成しえることはロボットでできてしまうのである。

だとすれば、人間よりも簡単に質も数も揃えられるロボットに任せてしまおうと考えるのも無理はない。対テロ部隊などはそれこそ、隊員の犠牲やPTSDなどのリスクを考えれば最もロボットに置き換えてしまいたい分野の一つだろう。

ただ同時に、

『ロボットに人間を殺させる』

ことに強い反発があるのも事実で、まさにそれが<反AI・反ロボット思想>を生み出してもいるので、

『すべてをロボットに任せてしまう』

ことができない一番の理由ともなっている。

加えて、

<人間であること。に対するある種の宗教染みた価値観を抱く層>

も多い。

<火星史上最凶最悪のテロリスト、クグリ>を最終的に退けたのはメイトギアとランドギアのチームであったことは事実であるとされながらも、

『それはあくまで<人間の軍人>の協力があればこそ』

とも考えられていて、逆に、人間自身が最前線に赴くべき根拠ともされていた。

そのような背景もあり、ロボットが人間を殺すにはいくつもの条件をクリアする必要があった。その全容は一般公開されてはいないが、百項目以上だともされている。

なお、<サーペント>に配備されているメイトギアは、一般的なメイトギアのように日常的に人間の<仲間メイト>として振る舞う部分を圧縮し、作戦行動に特化した仕様になっている。<あくまでメイトギアという名目>で作られてはいるものの、実質的には<純戦闘用ロボット>であり、それをさらに突き詰めたのが、<アームドエージェント>と呼ばれるロボットなのである。

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