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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳
サイボーグの男、絶叫する
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左腕、左脚、右腕ともぎ取られてもなお、サイボーグの男は、
「殺す殺す殺す殺す殺す!!」
と怨嗟の声を吐き続けた。右脚だけで立ち上がり、サイボーグにとって最大の弱点であるはずの<脳>を収めた頭を打ち付けようと地面を蹴って飛び込んでくる。
となればその頭をもぎ取ってやればそこで終わるはずだが、さすがにそこまでは、アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)も行わなかった。頭部だけで生命維持ができるのが分かっていればそうしたかもしれないが、それについては確認できなかったのだろう。
アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)が身を翻して頭突きを躱し、残った右脚を捉えて捩じると、今度は膝関節の部分が折れて外れてしまった。
できれば股関節の部分から外してしまいたかったものの、実質的にはこれでもう何もできない。後は<自爆>を警戒する必要があるので、アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)は、瞬時に距離を取った。しかし、
「くそっ! 待て! 待ちやがれぇっっ!! てめえ! 殺してやる!! 絶対に殺してやるっっ!!」
とサイボーグの男は吠えるものの、自爆するような様子もなかった。しかも、残った右の大腿部と胴体部とでなおも動こうとしたサイボーグの男の体が、さすがに異常な挙動を無理に続けたからかリミッターが掛かったらしく、遂に停止してしまう。
「動け! 動けよこのポンコツ!! あいつを殺させろ!! くそが! くそがぁーっ!!」
などと、口だけはなおも達者だったが、もうどうすることもできなかった。
「ちくしょおおおおーっっっ!!」
破壊されたパトカーと二機のメイトギアの脇で、サイボーグの男は、ただ絶叫するしかできなかったのだった。
まるで、<悲劇の主人公>のように。
そんなサイボーグの男を残し、アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)の姿はいつの間にかそこから消えていた。
一方その頃、<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>のメンバーの一人が、ビルの空き室に陣取って窓の外を眺めていた。どこか物憂げな表情で。
「あ~あ…たりぃ……」
いかにも軽薄そうな、<テロリスト>と言うよりは、公園辺りで大音量で音楽を鳴らしつつ仲間とウェイウェイやってるのがお似合いの若い男だった。
と言うのも、その男自身は、<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>が掲げる理念など実はどうでもよかったのだ。街で騒ぎを起こすというから『面白そうだ』と思って参加しただけにすぎない。なのに、こうして<見張り>を命じられ、やる気もなくただ暇を持て余していただけなのである。
「もっとこう、派手なことしたかったぜ……」
「殺す殺す殺す殺す殺す!!」
と怨嗟の声を吐き続けた。右脚だけで立ち上がり、サイボーグにとって最大の弱点であるはずの<脳>を収めた頭を打ち付けようと地面を蹴って飛び込んでくる。
となればその頭をもぎ取ってやればそこで終わるはずだが、さすがにそこまでは、アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)も行わなかった。頭部だけで生命維持ができるのが分かっていればそうしたかもしれないが、それについては確認できなかったのだろう。
アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)が身を翻して頭突きを躱し、残った右脚を捉えて捩じると、今度は膝関節の部分が折れて外れてしまった。
できれば股関節の部分から外してしまいたかったものの、実質的にはこれでもう何もできない。後は<自爆>を警戒する必要があるので、アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)は、瞬時に距離を取った。しかし、
「くそっ! 待て! 待ちやがれぇっっ!! てめえ! 殺してやる!! 絶対に殺してやるっっ!!」
とサイボーグの男は吠えるものの、自爆するような様子もなかった。しかも、残った右の大腿部と胴体部とでなおも動こうとしたサイボーグの男の体が、さすがに異常な挙動を無理に続けたからかリミッターが掛かったらしく、遂に停止してしまう。
「動け! 動けよこのポンコツ!! あいつを殺させろ!! くそが! くそがぁーっ!!」
などと、口だけはなおも達者だったが、もうどうすることもできなかった。
「ちくしょおおおおーっっっ!!」
破壊されたパトカーと二機のメイトギアの脇で、サイボーグの男は、ただ絶叫するしかできなかったのだった。
まるで、<悲劇の主人公>のように。
そんなサイボーグの男を残し、アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)の姿はいつの間にかそこから消えていた。
一方その頃、<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>のメンバーの一人が、ビルの空き室に陣取って窓の外を眺めていた。どこか物憂げな表情で。
「あ~あ…たりぃ……」
いかにも軽薄そうな、<テロリスト>と言うよりは、公園辺りで大音量で音楽を鳴らしつつ仲間とウェイウェイやってるのがお似合いの若い男だった。
と言うのも、その男自身は、<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>が掲げる理念など実はどうでもよかったのだ。街で騒ぎを起こすというから『面白そうだ』と思って参加しただけにすぎない。なのに、こうして<見張り>を命じられ、やる気もなくただ暇を持て余していただけなのである。
「もっとこう、派手なことしたかったぜ……」
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