愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

サイボーグの男、過去を振り返る

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しかしこの頃から、このサイボーグの男は、AIとAIを搭載したロボットなどを毛嫌いするようになっていったようだ。

週に二回、<貧困世帯への支援>として無料の食材を届けに来るメイトギアが笑顔を向けるのを、

『気持ち悪い』

と思うようになり、そこに、

『俺達を見下している』

と、自分達貧しい者に対する蔑みが秘められていると考えるようになり、一方的に劣等感を覚え、認識を歪めていったのだと思われる。

もちろんそれは、<言いがかり>と称するのさえおこがましい身勝手な被害妄想にすぎないが、当時の彼の周囲には、その認識を正してくれる者は誰もいなかった。それどころか、彼の母親が率先して、

「自分達は不当に虐げられている!!」

などと、政府に対して抗議活動を行っている者達に同調し、デモに参加していくようになっていったのだ。

やはり自分が得た収入を子供達のためには使うことなく。

ゆえに、彼はそんな母親を見倣い、

『自分達が不幸なのは、社会がおかしいからだ。AIに支配されているこの社会が!!』

という一方的な憤りを醸成していったのである。

そして彼は悪い仲間とつるむようになり、

「こんな社会はぶっ壊してやる!!」

などと喚き散らしては気に食わない人間やロボットに暴力を振るう<ストリートギャング>へと成長していった。

とは言え、かつての地球にいた<ストリートギャング>に比べれば、ロボットによる治安維持が功を奏したこともあって凶暴さ凶悪さにおいて格段に劣るものではあった。それでも平穏に暮らしているだけの市民にとっては十分に脅威であり、社会問題として人々を悩ませていた。

その中で彼は率先して社会に対して牙を剥く<武闘派>として頭角を現し、一時期、他の都市に移住してゲリラ活動にも参加し、そこで重傷を負ったことをきっかけに<サイボーグ手術>を受け、

「すげえ! ロボットなんて目じゃねえぜ!!」

自身のサイボーグボディの力に溺れ、より高出力高性能なボディへと改造を繰り返していくこととなった。

「おめえもイカつくなったなあ」

何度目かの改造を終えた彼にそう声を掛けてきたのも、もはやどこをどう見てもレイバーギアにしか見えない大柄なサイボーグだった。

「うッス! ゲイツさんのおかげッス!!」

サイボーグの男は、まるで大好きな主人を前にした子犬のようにふわふわした様子で声を上げた。そんな彼に、『ゲイツ』と呼ばれたサイボーグは、

「だが、まだまだ俺の方が上だからよ。お前もしっかり働いて稼いで、もっともっと強くなれよ」

と彼の肩を叩いたのだった。

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