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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳
逃走犯、ウルヴァリン・ガーデンを目指す
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「くそっ! 何だったんだ今のは!?」
岩丸ゆかりを攫った男達はそう毒吐くが、運転手の男は、運転に集中していた。AIによる制御に頼らず猛スピードですり抜けて、時には逆走して、前へ前と急ぐ。
運転手の男の技術もさるものの、実は、周囲の車両を制御しているAIが事故にならないように躱してくれているのだ。アクション映画などではカーチェイスになったりもするところだろうが、ここでは、完全に無関係な民間の車両がそのような危険行為に及ぶことはない。車両に乗っている人間の安全をなにより優先するからだ。
暴走車に対処するのは警察の仕事なのだから。
しかし同時に、暴走車両についての情報は次々と通報され、所有者がドライブレコーダー(自動運転のためのカメラ映像を録画する機能)の映像を直接警察に提供する設定(任意で設定できるが、全体の二割程度の所有者は警察に協力するためにとその設定を行っている)にしている車両からは映像も届き、リアルタイムで追跡ができていた。
だがそれも、その種の連携が確実に行われている地域だけである。
と言うのも、このニューオクラホマにおいても、JAPAN-2の<新京区>のように開発最初期の頃に作られた地域の一部では、後に開発された地域との間で同様の確執があり、十分な連携が行われていないという現実もあった。
男達は、そこに逃げ込もうとしているのだ。そうすれば警察の目も届きにくくなる。かつてのアメリカの<スラム街>ほどではなくても、その中では事件発生率も桁違いに高い。
そういう地域のことは、正式な名称ではないが俗に、
<ウルヴァリン・ガーデン(クズリの庭)>
とも呼ばれている。ちなみに、<ウルヴァリン・ステート(クズリの州)>とも呼ばれるミシガン州が擁する都市<デトロイト>を意識しているとも言われているが、そちらは定かではない。
なお、<クズリ>というのは、<クロアナグマ>とも呼ばれるイタチ科の獣で、かなり凶暴な気性を持つとされている。
そこに逃げ込んで体勢を立て直し、<計画>を前倒しで実行しようとしているようだ。
「ついでにラブドール共の宴も潰したかったが、今回のが上手くいきゃ、さすがに中止になるかもしれねえし、それで良しとするか」
岩丸ゆかりを抱えた男が不満げに呟きながら携帯端末を手にして、
「おい! 計画を前倒しにする! 今すぐそっちも準備しろ!」
と命令した。
「はあ!? お前何言って……ああもう! 分かったよ! どうなっても知らねえからな!!」
通話先の相手が忌々し気に応えるが、どうやらこのまま遂行することになったようだった。
岩丸ゆかりを攫った男達はそう毒吐くが、運転手の男は、運転に集中していた。AIによる制御に頼らず猛スピードですり抜けて、時には逆走して、前へ前と急ぐ。
運転手の男の技術もさるものの、実は、周囲の車両を制御しているAIが事故にならないように躱してくれているのだ。アクション映画などではカーチェイスになったりもするところだろうが、ここでは、完全に無関係な民間の車両がそのような危険行為に及ぶことはない。車両に乗っている人間の安全をなにより優先するからだ。
暴走車に対処するのは警察の仕事なのだから。
しかし同時に、暴走車両についての情報は次々と通報され、所有者がドライブレコーダー(自動運転のためのカメラ映像を録画する機能)の映像を直接警察に提供する設定(任意で設定できるが、全体の二割程度の所有者は警察に協力するためにとその設定を行っている)にしている車両からは映像も届き、リアルタイムで追跡ができていた。
だがそれも、その種の連携が確実に行われている地域だけである。
と言うのも、このニューオクラホマにおいても、JAPAN-2の<新京区>のように開発最初期の頃に作られた地域の一部では、後に開発された地域との間で同様の確執があり、十分な連携が行われていないという現実もあった。
男達は、そこに逃げ込もうとしているのだ。そうすれば警察の目も届きにくくなる。かつてのアメリカの<スラム街>ほどではなくても、その中では事件発生率も桁違いに高い。
そういう地域のことは、正式な名称ではないが俗に、
<ウルヴァリン・ガーデン(クズリの庭)>
とも呼ばれている。ちなみに、<ウルヴァリン・ステート(クズリの州)>とも呼ばれるミシガン州が擁する都市<デトロイト>を意識しているとも言われているが、そちらは定かではない。
なお、<クズリ>というのは、<クロアナグマ>とも呼ばれるイタチ科の獣で、かなり凶暴な気性を持つとされている。
そこに逃げ込んで体勢を立て直し、<計画>を前倒しで実行しようとしているようだ。
「ついでにラブドール共の宴も潰したかったが、今回のが上手くいきゃ、さすがに中止になるかもしれねえし、それで良しとするか」
岩丸ゆかりを抱えた男が不満げに呟きながら携帯端末を手にして、
「おい! 計画を前倒しにする! 今すぐそっちも準備しろ!」
と命令した。
「はあ!? お前何言って……ああもう! 分かったよ! どうなっても知らねえからな!!」
通話先の相手が忌々し気に応えるが、どうやらこのまま遂行することになったようだった。
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